『どうもネギです』
『ヌギです』
『ミギです』
『ホギです』
『ヤギです』
『オギです』
『ヤハギです』


最後に『ギ』がつきゃいいってもんじゃねーっつーの。

ネギ先生の部屋と書かれた張り紙の外では夕映と鳴滝姉妹・いいんちょとまき絵即席コンビが乱闘を繰り広げていた。
夕映が入口を死守している間、のどかは布団で寝ているネギの傍で息を整えていた。

「い…いただきます〜〜〜」

こいつも3−Aの住人だけあってなかなかしたたかなことをする。
だがご存知の通り、そうは問屋が卸さなかった。
それが冒頭の偽ネギ集団である。

さて、この大作戦の行く末はいったい………。




ネギま×HUNTER!第9話『修学旅行珍事件その2〜Chuが貢貰?〜part2』




『ひゃぁあああぁあぁああ!!!!』
「悲鳴!?のどか!(ネギ先生に襲われた?それはそれで本望なような気もしますが)」

夕映達は一旦争いを止めてネギの部屋に駆け込んだ。
なにか恐ろしいものでもみたのか、のどかネギの布団の上で目を回して気絶していた。
夕映以外は開かれた窓からさっさとネギを追っていった。

「ね、ネギ先生が7人……」
「なに言ってるですか!?しっかり!」

いくら声をかけてものどかは目を覚ましそうになかった。
それほど7人の小人ならぬ7人のネギは、ファンシーを通り越して残酷描写だったのか。
今はゆっくり眠らせてあげよう。

「待っててくださいのどか、すぐネギ先生をつれてきますから。………その前にお手洗いへ…」

のどかをネギが使っていた布団に寝かせ、ネギとトイレを求めて部屋を出た。
すると、ちょうど目の前に件のネギがいた。


そして、

「キスしてもいいですか?夕映さん」
「いいんちょさん、キスしたいのですが……」
「チューしてもいいですか?」
「あの…お願いがあって…その、キスを」
「今から史伽ちゃんの唇をいただきます」
「エナさん、接吻を……」
「嵩田さんって綺麗な唇してますね」

何人かの偽ネギは自殺行為を行ってるようだが。

『おおーーー!?コレどーゆーこと!?』
『まさか影武者?』
『すごい大どんでん返し!朝倉やるじゃん!』

監視カメラ越しに盛り上がるクラスメートとは対照的に、

『あーわわわ大変だ!兄貴が7人もー!』
『何なのよアレはー!』

予想外のことが起きてパニクる朝倉とカモコンビ。
これに対し、当事者たちの反応はと言えば、ほとんどが原作と同じ展開だが、嵩田一味だけは違った。

これから戦おうというときに水を差されたエナ班と古菲班は、その後新田の追撃にあったということもあり、とりあえずネギを一人ずつ担いで逃げたのだ。

周りが落ち着いた頃、ネギはもう一度さっきのセリフを言う。

「くーふぇさ―――ピグ!?」
「お前、ネギ坊主じゃないアルな?」

なんと古菲は偽ネギに踵落しをぶちかました。テレビの前のクラスメートは突然の暴挙に唖然とする。
『教師虐待・即退学』。こんな言葉が飛び交う。
しかし次の瞬間、ちょっと地面にめり込んだネギは『ミギでした』というセリフを遺し、爆発した。

「よくわかったでござるな」
「いやぁ、これも修行の賜物アル」

種明かしはもちろん『凝』。新幹線でレンジがツバメを見たように、古菲にも今のネギ―――いや、ミギが人間ではなくオーラと紙で出来ているとわかったのだ。

実はこの偽者、楓ですら見破れなかったのだ。原作でもそれは証明されている。

「(このまま修行を積めばすぐ追い抜かれてしまうでござるな)」

古菲のような強者が増えるのは願ってもない。だがどこか言い表し様のない感情が楓の中に芽生える。

「さぁ行くアル!なんとしてもエナより早く師父の唇を奪うネ!」

妙な競争心を出して古菲は旅館のロビーへ向った。確かにそっちにレンジがいるのだが、どうやって知ったのだろう。野生の勘だろうか。

「…………寂しい……いや、悔しいのでござるな……」

友人を見送る楓はポツリと呟いた。
甲賀忍者中忍長瀬楓、未だ師に巡りあえず。





「オギでした」

そう言い残して爆発するオギ。
エナは凝で見るとか気配でわかるとかそんなのじゃなく、さっきのセリフを言われた時点で念弾を放っていた。問答無用である。

「本物だったらどうするつもりだったんですか?」
「ふざけたこと言うガキに躾はするでしょ普通」

まったくもって正論です。バカにはそれがわからんのです。

「で、この事態はどう思う?」
「朝倉さんに陰陽道を使う術はありません。おそらく桜咲さんの身代わり符をネギ先生が使ったものと思われます。テレビか何かを見ていて命令を刷り込まれたのではないかと」

命令を本人から受けていた偽ネギですら命令を置き換えられたのだから、あまり信用できる術ではなさそうだ。

「まったく……なにか事件を起こさなきゃ気がすまないのかしら、あの子供先生は……。行くわよ、さっさとレンジにキスしてゲームを終らせましょ」
「はい。………ロビーのソファーで寝ているようです。監視カメラに映っています」
「サンキュー。茶々丸がいてくれて助かったわ」

エナと茶々丸もまた、レンジが眠っているロビーへ向った。


だがしかし、異変を察知した偽ネギ達もまた、ロビーへと走り出したのは言うまでもない。





『こ、これは大変だーーー!複数のネギ先生が一気に集結!各班はいったいどうするのか!』

脱落した千雨と裕奈も含めて、ゲームの参加者が一斉にロビーに集まった。偽ネギは4人だけ。どうやら夕映は偽ネギの撃破に失敗したらしい。
運がいいのか悪いのか、新田は今3階へ見回りに行っている。
そしてレンジはソファーいまだ気絶中。
つまり、今の彼女達を止める人物はいないということだ。

「ネギ先生〜〜!」

互いが相手の様子を伺っていたさなか、最初に動いたのはまき絵だった。新体操で使うリボンで近くにいたネギを捕獲し手繰り寄せる。
この娘は普通に人外な特技を持っているのだが、本当に一般人だろうか。

「くっ!わ、私だって!」

負けじといいんちょもネギを捕まえた。

まき絵といいんちょが同時にネギへキスをする。
その瞬間

「ヤギでした」
「ホギでした」

煙を上げて爆発する偽ネギ。至近距離にいたまき絵といいんちょは当然ながら気絶した。

「隙ありーー!」
「あ、え…えっと私はこっちで!」

最後に残った2人のネギを鳴滝姉妹が確保した。常識的に考えればどっちかが本物で偽者。
もしこの瞬間を狙っていたのだとすれば、将来がとても楽しみなしたたかな女になるでしょう。
しかし、古来より悪は栄えないものである。

「ネギでした」
「やはぎでした」

そろって爆発。姉妹だけあっていいタイミングだ。
煙に包まれ、死屍累々のロビー。
残ったのはエナ・茶々丸班、古菲・楓班、夕映・のどか班だけ。
そして、夕映とのどかは本物のネギを探してどこかへ行ってしまう。

「やはり残ったか……」
「愚問アルな」

元々興味がないことに加え、偽者と分かっていたので相手をしなかった。あわよくば引っかかってくれれば御の字だっただろうが、やはり一筋縄ではいかない。

ヤる気と合わせて殺る気満々の2人を置いて、茶々丸と楓はさっさと安全な場所へ避難する。

「今思えば、貴方にレンジを紹介したのは間違いだったかもしれない。こんなことになるのなら」
「エナには感謝してるアル。でも……仕方のないことネ」

そう言って古菲は構えた。もう語ることは無いとオーラで語っている。
エナは彼女に応えた。古菲より洗練されたオーラで。

「師父の唇はもらったアル!」
「やってみなさいよ……この、泥棒猫がーーー!」

ヒステリック調に叫び、エナは古菲に飛び掛った。
荒れ狂うオーラと水のように穏やかなオーラが

「もふ!」
「わぷ!」

枕越しにぶつかった。てゆうかそういうルールだし。

「ホント楽しそうでござるな〜」
「あの方達は修行以外でもよく一緒に遊んでおられます」

いいんちょ達が落とした枕も使って、ポスポスと叩き合う姿を楓と茶々丸は微笑ましく見守っていた。

しかし勘違いしてはいけない。一見じゃれあっているように見えて、実は結構真剣に戦っているのだ。

このゲームの目的はあくまでキスである。妨害はそこに辿り着くまでの手段であって、けっしてしなければならないものではない。
エナと古菲もその辺りは重々承知している。だからさっさと実行しようとしているのだが、絶妙なタイミングで行く手を阻まれるのだ。

避けるのが難しく、受け止めるしかない攻撃。枕を足でつまんで足払い等。
エナにいたっては『周』を使っているので尚更性質が悪かった。

限定された攻撃による妨害。互いにとって、これを掻い潜りレンジの下へ行くのは至難の業である。



だが、どんな事象でも終わりがあるように、2人の戦いも終る。それは唐突に訪れた。
エナが死屍累々……つまりはまぁ気絶したまま放置していたクラスメートの一人、史伽の腕を誤って踏んでしまったのだ。
しかもそのとき、エナは回し蹴りをしようとして大きく振りかぶっていた。当然足場が安定していないのにそんな大技を出せば

「キャッ!」
「おぉう!?」

引っくり返るのが必然。
さらに、回し蹴りを受け止めようと構えていた古菲も、まさかここで転ぶとは思わず、思いもしなかった場所に足を当てられ、盛大によろめいた。
けんけんとたたらを踏む古菲。

その先にレンジがいるのは、もうお約束だよね。




「よっしゃーー!古菲と宮崎のどかの仮契約カードゲットーーー!」
「偽先生でもスカは出るみたいだね!計7枚じゃん!」

ちゃっかりのどかも、どこかでネギとキスしたらしい。優勝は上記の2人で決定した。
ちなみに、スカカードではオコジョ$どころかカードとしての価値すらないことに朝倉は気付いていない。

「大掛かりだった割りにはなさけねぇ成果だが仕方ねぇ!ずらかるぜ!」
「あいよ!」

食券の束を担いでトイレから出ようとする朝倉とカモ。
だが扉を開けた瞬間

「悪い子はいねぇが〜〜〜!!!」
「ぴぎぃーーーーー!!!!」

麻帆良のなまはげに捕まった。悪は滅びる運命なのです。

「お前が主犯かー!来い、ロビーで正座させてやる!ついでにそのフェレットもだ!」
「ひぃえぇぇぇ………」
「(俺はオコジョだっつーのに。…………ん?こ、これは!)」

朝倉共々連行されるカモの前に新たなパクティオーカードが現れた。
手にとって見てみると、そこには彼が欲して止まない人物が浮かんでいたという。



「全員朝まで正座!ネギ先生もです!!」

こうして本当は盛り上がってるはずなんだけど作者の文才が無いお陰で中途半端になってしまった『唇争奪!修学旅ry』は幕を閉じた。
目的を達成できた者、出来ずとも思い人の隣に入れる幸せに浸る者、ゲームを楽しんでいた者、嘆く者、そろそろ我慢が出来なくなってきた者等、様々である。

「えへへ〜、とうとう師父とキスしちゃったアル」
「私だってしたんだから引き分けよ。今度は絶対負けないからね」
「そういう問題でござろうか……」
「そこ、喋るんじゃない!」

見張られている新田に一喝されて、正座している全員が一気に姿勢を正す。
朝まであと何時間あるのだろうか。比較的まともな思考を持つ者をただそのことだけを思った。

「まったく……調子に乗って馬鹿やるからそういうことになるんだよ」

カメラを持ったレンジが2階から降りてきた。班ごとの集合写真を撮り終えて、残りのメンバーを撮りに来たのだ。

「まぁこれもいい思い出になんだろ。は〜いこっちに目線くださ〜い」
「(なるわけねーだろ!)」

レンジの合図に合わせてみんながカメラにポーズを取る。
一人だけ心の中で毒づいたが、それは誰と言わずともわかるだろう。



はいチーズ













「この、泥棒猫がーーー!」
いいですねぇ、嫉妬修羅場。SS読みまくって普通の恋愛に飽きた人にはお薦めです。
このSSでは雰囲気皆無ですがね。
かなり短いですが今回はこれにて終了とさせていただきます。