修学旅行が終わり次の日の日曜。今日も今日とてレンジ達はエヴァの別荘に集合していた。
理由はもちろん自分達のアーティファクトと古菲の能力の確認のためだ。
マジックアイテムに詳しいエヴァを交えて披露会が行われる。
まずは古菲から。
最初にアーティファクトを出してから纏から練へ、練から絶へ、絶から発へ。そうして現れたのはもう一人の古菲だった。
ちゃんとアーティファクトも装備している。
「ダブルか、スカトロと同じ能力だな」
「そんな卑猥な名前のキャラは居なかっただろうが!!」
正式はカストロです。元ネタはカリオストロとかじゃないでしょうか。そう信じたいものです。
「ワタシは創求人(ドッペルゲンゲル)と名付けたネ。でもいまいち効果がわからないアル」
本体の古菲しか喋れないらしく、ドッペル古菲はキリっとしたまま立ったままだ。
レンジはあの世界にいた念能力者を思い返す。どんな能力だったか、どんな特徴があったか。
最後辺りで、ある人物が使っていた能力を思い出した。
念能力で生まれたものが意思を持つ。
カイトが使っていたピエロやグリードアイランドのキャラクター達がそれだ。
そして古菲は言った。『もう一人自分がいれば』と。
ならば推測するに事は足りている。
「古菲、そいつと戦ってみろ」
もとより拳法家なら拳で語り合え。ちょっと意味合いが違うが、この場合はそれが一番だろう。
返事一つして、古菲はドッペル古菲に軽いパンチをお見舞いする。
すると、ドッペル――――面倒臭いので´古菲としよう。
彼女は問答無用の炮拳(パオチュアン)で返した。形意拳の代表的なカウンター技である。
古菲は顔面に当たる寸前で受け止めることに成功した。もし´古菲が念を纏っていたら大惨事になっていたことだろう。
「ど、どういうことアルか?」
「そうだな。完全自立型の分身って言えばわかりやすいか?要はもう一人のお前だよ」
創求人(ドッペルゲンゲル)
古菲の念により生まれた念人。実力は本体とまったく同じで完全自立型である。
基本的に命令で動くが、細かなことは自分で考えて動く。つまり『戦え』と命令すれば本体が持っている技術を駆使して戦う。
数は一体しか創れない。さらに使用中は2人分のオーラを使っていることになるので長時間の使用は、古菲の今後の頑張り次第。(通常で練が2倍、堅が4倍の使用量なら、ドッペル使用時は更にその2倍)
活動範囲は制限無し。そのかわり離れれば離れるほどオーラの使用量は増える。(現在1メートル以内で20分)
制約と誓約は可能。ただし数が増える、分身だけ強くなる等は不可能。
「す、すごいアル!自分と戦える日が来るとは思わなかたネ!」
自身の修行にも使え、更に実戦でも役に立つ。
楓の影分身のように数の優位性は無いが、それを補って持続性が最大の強みとなるだろう。
レンジが言った通り、本人が欲しいと思ったチカラが手に入ったということだ。
続いてエナ。
アデアット、と唱えて出てきたのは『マテリア・ストライク』。完全長距離用の大砲だ。
エナについては確かめることは何も無い。
ただ、エヴァがどうしても『黒弾』の威力を知りたいと言って来たのだ。
あのときは結界を展開していたため見ることは出来なかった。古菲も戦いに集中していて、ただ強い光が出たとしか認識していない。
そのため、海に向って撃ってみようというのだ。
エナ自身も、すこし本気を出したときの威力がどれくらいなのか知っておきたかったため了承した。
それから10分。練りに練った念弾は人の拳大ほど大きさになってエナの掌に浮いている。
スクナを跡形もなく消してしまうのだ。さぞかし凄まじい威力なのだろうと誰もが期待する。
マテリア・ストライクの糾弾口に弾をもっていくと、筒の中に弾が吸い込まれた。
エヴァは、一応結界の準備をしておく。場合によっては津波が来るかもしれないと思ったからだ。
これで準備は整った。エナは合図と共に構え、
「黒弾!」
撃った。風切音と共に遠くへ消えていく念弾。
そして、とうとうエナの視界から姿を消した瞬間――――。
とてつもない量の水蒸気が天空へ迸った。
「…………ん?これだけか?」
「爆風とか津波とか来ないアルが?」
ピカッと光った瞬間水蒸気の柱ができただけ。これはレンジも不思議に思った。
自ら教えた反物質の『は』の字も見当たらない。そのことをエナに聞くと、
「あれねぇ、やろうと思ったんだけど上手くイメージできなくてやめちゃったのよ。核より凄いってのがわかんなくて」
「じゃあなんだよあれ」
「『電磁波(マイクロウェーブ)』」
電磁波とは
電磁場の周期的な変化が真空中や物質中を伝わる横波。マクスウェルの電磁理論によって、光やX線が電磁波にほかならないことが示された。
レーダーや電話、テレビの中継などに用いるほかレーザーとして機械的加工・医療にも使われている。
「弾から電磁波を大量に出し、水蒸気の熱と勢いで鬼を消し飛ばしたってのか?」
「いや、仮にも鬼神がその程度で還されるわけがない。…………念で作った電磁波だ。おそらく魔力の篭もったものだったのかもしれん」
「つまり………どういうことアル?」
「プクーっとなってパーンとなったということだ。猫を電子レンジに入れたようにな」
そんな事例はないのだが、想像してしまったのか、ガタガタ震えだす古菲。
「(もしくは震動されて霧散したか。どっちにしろ脅威だな)」
エヴァも表に出さないが、組んでいる腕に隠れた掌にはジットリ汗が浮き出ている。
物理的、魔力的に効果を出す巨大電子レンジで殺される。そう考えるだけで鳥肌が立つというものだ。
湖の水は瞬間沸騰して水蒸気か、分解されて水素と酸素に。湖の周りにあった桜がなんともなっていなかったということは、紺弾のように単一方向か局所的発生ということだろう。
「(はて、ではあのクレーターはなんだったんだ?)」
水は蒸発しただけ。なら湖にクレーターなど出来るはずが無い。
実は湖そのものが、サウザンドマスターがスクナを封印するときにできてしまったものだと知らされるのはもう少し後のことだったという。
最後に(電子のつかない)レンジ。
アデアットと唱えて出てきたのは12個の金の指輪。
ジョイントリングの名付けられたそれは、装着者同士を様々な意味で繋げるものである。
ネギがクロノスライサーの影響を受けなかったり、離れていたレンジの容態を知ることができたのもコレのおかげだ。
パクティオーカード無しでも念話ができたり、互いの現状を知ることもできる。
今のところ範囲は100メートル程度しか確認されていない。
以上のことが分かった上で、レンジはふと思う。
「コレ、俺単体のメリット無くね?」
ネギま×HUNTER!第15話『弟子入り志願』
大河内アキラは悩んでいた。
その内容はたった2つで、どれもある共通点があった。
自分にとって大切なこと、諦められないこと。
これからも大切なことでありつづけるために、彼女は悩んだ。
しかしよく考えてみれば、なんのことはない。
私は――――が大好きなのだから。
大河内アキラは決意した。
そうすると体がフッと軽くなった。このままあの人の所へ行こう。
クラスメートがよく行くクラスメートの家へ。
ネギは考えていた。
京都での戦い。
父親のこと、先生という課題のこと。
これから先のこと。
だからエヴァンジェリンに弟子入りすることにした。
考えて結論を出す時間は短かった。
んで
「なんでエヴァちゃんに弟子入りするって決めたわけ?」
エヴァのハウスへ赴く道中、アスナはネギがこれからしようとしていることを聞いて少しだけ納得し難い顔をした。
確かに京都では守ってもらったし、怪我をしたネギを心配していたところを見て、極悪人ではないと考え方を改めたからだ。
しかし彼女は吸血鬼。いつかのようにネギの血が狙われるのではないかと心配なのだ。
本人の強い意志で諦めざるをえないが。
「今回の旅行で、僕は力不足なんだと実感しました。嵩田さんやエナさんがいなかったら僕達は死んでたかもしれません」
ある意味エナの所為で死にかけたのはスルーで。
「学園長やタカミチにお願いしようと思ったんですが、2人とも忙しくて……」
「そういえば高畑先生、広域指導員なのにしょっちゅう出張してるわね。あ〜、今頃なにやってるかなぁ……」
初恋の相手に会えない寂しさから、アスナから盛大に溜息が出る。
「溜息吐くと幸せが逃げちゃいますよ」
「それでも吐かずにいられないのよ」
そのままグダグダと喋りあいながら、2人はエヴァのハウスに到着した。
そこで見たのは、およそこの場所にいるのがおかしい人物だった。
「アキラさん?」
アスナに呼ばれた人物は、突然声をかけられ驚き、振り向く。そしてアスナ達と同じように驚いた顔をした。
「ネギ先生、アスナさん」
「なんでアキラさんがここにいるの?」
「いや…それは……。2人こそどうして………」
応答が無い質疑が始まる。そんなことを玄関先でされれば当然、中の人は気になって仕方が無いだろう。
「どちら様ですか?」
そう言って玄関を開けたのは、
「エナちゃん!?」
メイド服を着たエナだった。
「アスナちゃん、ネギ先生。それと…オオコウチアキラさん?」
最後は自信がなさげに疑問系だったが、当の本人はあまり面識が無いのに名前を覚えてもらってうれしいようだ。
「どうしてエナちゃんがここに?」
「茶々丸ちゃんが一週間ぐらい留守にするから、臨時バイトで雇われたの」
修学旅行で壊された茶々丸は現在工学部で修理中である。
その間、家事が何一つできないエヴァはエナとレンジを雇ったということだ。
立ち話もなんだからと、エナは主人の断りも無く三人を招きいれた。
居間は人形で埋め尽くされているので、2階の茶室で話を聞くこととなる。
「私に弟子入り?アホだろ貴様」
『か』ではなく『だろ』と断言されてしまいしょんぼりするネギ。
さらにエヴァは一応敵対関係だの弟子は取らないだの言って頑なに拒否する。
「別にいいじゃない弟子入りぐらい、暇つぶしぐらいにはなるでしょ」
「バカ言え。これでも警備員をしてるんだ、暇なものか」
エナが相手だと若干口調が柔らかくなるエヴァ。さすが担任のネギより付き合いが長いだけある。
「この学園には魔法使いは大勢いる。タカミチかジジィにでも習え」
「それを承知で来たんです!タカミチや学園長は忙しすぎてほとんど学校にいないし……なにより京都で見せたあの遮断結界、あれほどの結界を張れる魔法使いはそうはいません!僕は、魔法を習うなら是非エヴァンジェリンさんにと!」
ピクっとエヴァの耳が動く。
「確かに、あんな弾を完全に防ぐ魔法を張れるってのはすごいわよね」
その弾を作った張本人の言葉を聞いて、エヴァの耳がピクピクと動く。
「ほう、つまり私の強さに感動したと?本気か」
「はい!」
「ふん……なら弟子入り試験といこうじゃないか」
「え?」
エヴァは一度チリ紙で鼻をかみ、続きを言う。
「はっきり言おう。私は一から全て教えるつもりは無い。ある程度の実力は身に付けておいてもらわねば困る」
「あら?京都じゃ随分頑張ってたみたいだけど、あの程度じゃだめなの?」
「あのときこのボーヤが決定的な成果をあげたか?私とお前、レンジが居なければ今頃どうなっていたか知らんぞ」
京都でネギが出来たことと言えば
@カエルを集める。(親書を式神に取られ、刹那のおかげで取り戻す)
A露天風呂でレンジを仲間に。(式神の猿を本物と勘違いして刹那の邪魔をする)
B外を見回る。(ドアを開けた所為で結界の効果を無駄にする)
C外を見回る2回目。(ペットの躾が足らず、スカを含む仮契約の嵐)
D親書を無事渡す。(生徒一人を魔法関係に巻き込む)
E少年に挑発され足止めされる。(結果としてスクナを復活させる時間を敵に与える)
Fスクナを撃退しようとする。(効かず魔力をゼロに。後々まで不都合が多数有り)
G白髪少年に体当たり。(半分レンジのおかげ)
「ていうことになるわね」
「邪魔者以外の何者でもないわね」
「あぶぶ。そんな〜〜」
エナの酷評とアスナの感想を聞いてネギは慌てる。
「そういうわけだ。努力は認めてやるが、それだけで世界は成り立たん。一週間以内に試験を行う。それまでに自分に必要だと思う力を身につけて来い」
グっと、ネギは言葉に詰まる。しかしここで断ることも、試験内容を変えてもらう事もできるはずが無い。
「わかりました!」
ネギは元気よく返事をした。
「それで、あっちへの対処は考えてるのか?」
エヴァがネギの横を指差す。そこには茶室でお茶を飲んでいる大河内アキラがいた。
ネギの方を向いて話を横聞きしている。
「あの……魔法ってなんですか?」
大河内アキラの一言で、ネギの顔が『叫び』になった。どうやら説得に夢中でアキラの存在を忘れていたらしい。
その後、必死にアキラに弁解するネギの姿が見られるが、結局根掘り葉掘り聞かれることになったのは言うまでも無い。
ちなみにキッチンで仕事をしていて、あとでそのことを聞いたレンジは
「カモ、お前わざと放置してただろ」
「オ、オレッチはそんな」
「別にお前等のすることに口出しするつもりはねぇよ。だがほどほどにしておけよ」
「ウ、ウィッス……」
というやりとりをしていたという。
アキラへの説明だ終わった頃、少し小腹がすいたというエナの提案で、簡単なおやつを囲んでティータイムが開かれた。
おやつを作ったのは何故かレンジ一人だったが。
「あっちじゃ家事全部レンジがやってたから。私?できないできない」
「女としてそれどうよ」
大河内アキラ以外の女性はしょんぼりした。
「そういえばアキラさんはなんでここに来たの?」
エヴァを叩くイベントが無くなって出番がなかったアスナが問う。魔法関係以外でここに来る理由を、はっきり言って彼女が持っているとは思えないのだ。
「えぇっと……カメラマンさんに話が」
だったら名前ぐらい知っとけと、何人か心の中でつっこむ。その間にエナとレンジは視線を合わせた。
「(なんかあったの?)」
「(あぁ……京都でそんなこと言ってた。返事は考えたいんで待ってくださいとか)」
「(心当たりは?)」
「(無い。多分分身がなにかしたんだ)」
一瞬のアイコンタクトで会話を済ませ、改めて大河内の話を聞くことになった。
説明を含めて最初から。
あれは旅館の中の出来事でした。私は友達と売店でジュースを買って、部屋に戻る途中だったんです。
すると、教員用の部屋から瀬流彦先生とカメラマンさんが出てきたんです。瀬流彦先生はベロンベロンに酔ってたんですが、カメラマンさんは何故かピンピンしてました。
「(分身って本人に影響されるのかしら)」
「(だったらストリップなんてするわけ無いでしょ)」
少し心配になったので「大丈夫ですか」と尋ねたんです。瀬流彦先生は始終「オミットされた、オミットされた」って呟いてました。
「(元々そういうキャラだと何故あきらめん)」
「(むしろ新田先生の方が出番が多かったよな)」
カメラマ「嵩田レンジ。レンジでいいぞ」……レンジさんは、何故かジッと私を見たんです。酔った勢いで何かしてくるのかなと少し怖かったです。
「(………)」
「(………)」
「(………)」
「(………)」
「オレ無実、オレ無実」
それで、レンジさんはこういいました。『お嬢ちゃん、いい体してんな』と。
「(………)」
「(………)」
「(………)」
「(………)」
「オレ無実、オレ無実」
そのあとこう言いました。『なんか運動やってるだろ、水泳とか水関係の』と。確かに私は水泳部に入ってますと答えました。
すると、『やっぱりな。どうだ?オレのところで世界目指してみねぇか?あんたなら絶対行けるぜ』と言われたんです。
「おk把握」
「それで、悩みに悩んで弟子入りに来たと」
「はい。よろしくお願いします」
すでに教えを受けるのが決定されているらしい。偽者とはいえ誘ったのはレンジのほうだ、拒否権はない。
「くそぅ、分身め余計なことしやがって」
「ご愁傷様。古菲と一緒に念でも習わせとけば問題ないでしょ」
他人事のエナは気楽に言う。秘密を共有する友人が増えるのに越したことはないらしい。
そうなると秘密が秘密ではなくなる、ということに気付かないのは駄目だろう。
「また別荘の利用者が増えるのか……」
過去の悪寒は的中したことにエヴァは大きく溜息をつく。
その後、ネギは他にも寄るところがあると言って、アスナと共にエヴァ邸をあとにした。
残ったエヴァ達はさっさと別荘に引っ込むことにした。あそこなら花粉は来ないからだ。
別荘に入ったアキラは、魔法という凄さを改めて思い知ることになる。
燦々と輝く太陽はまるで南国。広い海はコバルトブルーで綺麗な色をしている。
さらに、別荘での一日は外の一時間ということを知った時は、あまりのデタラメ具合に溜息を漏らすばかりだった。
「ここなら時間を気にせず練習できる。オレは大抵ここにいるから、放課後になったら古菲と一緒にくればいい」
「弟子って噂は本当だったんですね」
「半分不本意ながらな。もう少ししたらあいつも来るから、それまで適当に遊んでてくれ」
そう言って、レンジは建物へ入っていった。エナとエヴァも一足先にどこかへ行ったらしくもう居ない。
さてどうしようか。そう考えたアキラだが、眼下にある浜辺を見たらそんな考えは吹き飛んだ。
こんな綺麗な海をジッと眺めるだけなんてもったいない。
アキラは長い階段を下りて浜辺に向った。
所変わって、ここは現実世界。
ネギは京都で助っ人に来てくれた3人にお礼を述べていた。
「それで、このことは内密に……」
「わかってるさネギ先生」
「ワタシもソチ側だからネ。口は固い方アル」
一応超とハカセの尋問を耐え抜いた実績があるため、その辺りは信用できそうである。
その代わり何かおごれという理不尽な要求を受けたネギだが、ジュース一杯ということで事無きを得た。報酬を貰っている龍宮もねだっていたが、なかなかしたたかな性格をしている。
そして次に向った先は今回の事件の報告するため学園長室に赴いた。
特に出番が無かったのでピンピンしています。
「大体の話は西の長から聞いておる。今回は本当によくやってくれた、ネギ君」
「いえ、僕だけじゃ何もできませんでした。嵩田さんやアスナさん達がいなかったらこのかさんは…」
「ほっほ。よいよい、男の子はそうやって強くなるもんじゃ」
実際ネギが出来たことは少ない。魔力が尽きても動いたのは賞賛に値するが、そもそもの原因は魔力をムダに使ったことでもある。
エナがいなかったらスクナを退治することは出来なかったし、エヴァがいなければ皆死んでいた。
だからこそ、ネギはエヴァに弟子入りすると決めたのだ。
まだ子供だからとか、ゆっくり強くなればいいとか、そんな悠長なことは言っていられない。
誰かを護るため、そして父の手がかりも見つけた今、早急に強くなる必要がある。
「それじゃあ今日はこれで。あっとそうだ、嵩田さんから預かり物です」
そう言ってネギは小型HDDを差し出した。
「うむ。おぉそうじゃ、伝えておくことがある。此度の親書を承諾した証として、西の方から交流人材が送られてくることになった。ネギ君、君のクラスの副担任ということにしておる」
「本当ですか!?」
「うむ。本人の強い希望での。明日の朝ホームルームでクラスに紹介しなさい」
誰が来るんだろう。ネギはそう思いを馳せながら学園長室を出て行った。
ネギが出て行き、部屋の周りに誰も居ないことを確認した近衛門はさっそくパソコンを取り出し、HDDをセットした。
中には修学旅行で撮った大量の画像データがあり、その中に学園長宛のフォルダがある。
ワクワクしながらそのフォルダを開け、画像を映し出すと
「フォンドゥヴァオゥ!!」
パンツ一丁の瀬流彦と新田が並んで座り、笑顔でピースしている絵があらわれた。
ご愁傷様。
これ以降のネギルートは原作どおりに進むのではしょらせていただきます。(ぉ
というわけでレンジルートへ。
龍宮、楓と別れた古菲は一直線にエヴァ邸へ赴いた。というのも、早く念能力を使いたくてしょうがないからだ。
魔法は秘匿。無論念能力もそれに該当する。一般人の前で創求人なんか使えば、いくら非常識に強い麻帆良の住民でも黙っていないだろう。魔法先生も黙っていないはずだ。
そういう事情から、普段は纏だけ使っている。練や堅だと一般人を威圧してしまう恐れがある。
強くなれるが、気を使わなければならないのが裏の世界の不便なところだと、古菲は思った。
「おっ邪魔っアル〜!」
勝手知ったる他人の家。中に誰も居ないと知るや、古菲は荷物を置かず真直ぐ地下室へ向い、瓶詰めの模型の前に立つ。
ここで纏を解く。そうしないと魔法陣が発動しない。なぜなら気と魔力は相反するらしいからだ。
待つこと数秒。ようやく魔法陣が展開し、古菲は別荘に入ることができた。
手すりの無い橋を通って建物に入ると、
「あぁもう可愛いわ!なんて小憎たらしいぐらい可愛いのかしら!」
エナが人形を愛でていた。モフモフした熊のぬいぐるみをサスサスと弄っている。
更に奥へ入ると
「ウォッカを70回蒸留すればアルコール95度のスピリタスになる。つまりもう10回ぐらいやれば少なくとも97度以上の酒がブツブツ」
それはもうアルコールそのものなので止めておいたほうがいいと思うのです。ちなみに、スピリタスを飲むときは火気厳禁です。燃えます。
そしてこの別荘の主は、
「…………」
胡座をかいてひたすら練をしていた。吸血鬼が一番まともというのはいかがなものか。
「今日もみんないつもどおりネ」
この光景を見て一切の疑問をもたないこいつもいい具合に洗脳されている。
「おぅ、来たか」
蒸留瓶の前でブツブツ言っていたレンジが古菲に気付く。
「今日のメニューは何アルか?」
「適当にやればいいさ。早く念を試したいんだろ?」
こういうところは強化系のように単純だ。顔に出ている。
「その前に紹介したい奴がいる。新しい弟子だ」
「およ?」
古菲は軽く驚く。自分の弟子入りのときはエナを通さないと無理だったほど、レンジは弟子を取ろうとしない。
基本的に彼は面倒臭がりなのだ。
「(一体誰アルかネ)」
件の人物が居る所へ行く道すがら、古菲大きな期待とちょっぴりの嫉妬を持って浜辺を向った。
浜辺に着いたレンジは
「レンジさんのエッチー!」
「何故!?」
古菲から強烈なビンタを食らった。しずかちゃんが空でサムズアップしています。
このビンタ事件の経緯はこうだ。
浜辺に大河内アキラの姿が無く、小さい浜辺なので一周するように探していると、何故か散乱した女性者の服が発見された。
まさか?とレンジに悪い予感が迸った瞬間、波打ち際に人の気配がしたのだ。
そこには上半身だけ海から出た大河内アキラがいた。無論裸だ。いくら水泳が好きだからといって毎日水着を持ち歩くような人ではないのだ、彼女は。
瞬間、傍から迸った念。慌ててクロノスライサーを発動させようとしたが、もう遅い。
レンジは目にも止まらぬ速度で沖までぶっ飛ばされてしまった。
以上の成り行きから5分後、身なりを整えたアキラと古菲の絶叫に反応したエナとエヴァも合流して、アキラ弟子入り報告が行われた。
妹弟子ができるかと思った古菲だったが、彼女は争い事が嫌いなため纏を教えてもらうだけらしい。
元々アキラは水泳のコーチをレンジに頼むだけだったから、それ以上を求めることもない。
「それではコーチ、これからお願いします」
「あぁ、こちらこそよろしく」
それらしく挨拶を返すレンジ。だがやることは古菲のそれとほとんど変わらない。
水泳のコーチなんかしたことが無いし、なによりアキラ自身のレベルは同年代から見ても高い。普通に泳げる程度のレンジに助言できることは何も無いのだ。
先行きが非常に不安になるレンジであった。
無虚様の素敵な指摘をいただいて、黒弾はこういう設定になりました。
まだ少し無理がありそうな気がしますが2次創作のゴニョゴニョということで勘弁してください。
実際のところ電磁波設定は反物質の前に出たんですが、インパクトがなかったんで変更しsて、今回元に戻したしだいです。
今後は素敵な指摘が来ないように精一杯がんがります。