古菲に、あくまで部長として特別講習を受けるように取り付け、気分は上々のネギは今日も先生として授業に取り組む。

「それじゃあアスナさん、3行目の文を翻訳してください」
「えぇ!?」

指名されたアスナはブチブチと文句を言いながら席を立った。

「えぇと………彼……は…言った。あなたは力が欲しい……です。わたしの手は……神の息で出来ています。落下した……種撒きを咲かせて………内包した力を紡ぎ出……す?綺麗な滅びのお母さんの力……」

足りない頭をフル回転させて、ようやく2行しかない文章を読み終える。

「単語はいくつか合ってたんですけど、変な文になってますね。ここの訳は『汝、力が欲しいか。我の拳は神の息吹。堕ちたる種子を開花させ、秘めたる力を紡ぎ出す。美しき滅びの母の力を』になります。種子と種撒きのように、単語の前後にある文で意味が微妙に変わったりするので気をつけてください」
「ていうかなんの文よこれーー!!」

元ネタは作者のバイブルの一つです。

「じゃあ次の」
「ネギ先生〜」

周りを見回すネギに、声を小さくした史伽が挙手する。ネギが彼女を方を向くと、挙手した手がツンツンと隣で寝ている娘を指差した。







ネギま×HUNTER!第17話「茶々丸がいないので56時間目はここまでです」






というわけで金曜日からスタートです。
佐々木まき絵の所為で試験内容が決まったわけではないので、彼女はこのイベントに参加しません。彼女ならきっと自分の力で選抜テストを突破できるでしょう。作者はそう信じております。
手抜きじゃありません。

「まずは前日教えた型を復習。一通りやったら組み手アル」
「はい」
「ただ動くのではなく、目の前に相手がいると想定して動くネ。型とはそういうものアル」

それが条件反射の域までくれば古菲のように達人と呼ばれる。
試験に向けて必死に中国拳法を習うネギ。飲み込みが早いのは何事にも一生懸命だからだろうか。それとも才能か。

そんな彼等は今、世界樹が見える丘にいる。

「おはよー」
「おはようございます」
「おっは、バカレッド」

そこへアスナともう一人がやってきた。ネギが世界樹の丘で朝練をしていると聞いて、自発的に参加するようになったのだ。
新聞配達が終ったばかりだというのに元気である。

アスナはハリセンを召喚して

「それじゃお願いします」
「うむ、遠慮なく打ち込むがいい」

ちょっと身長の高いカラス顔の人と向き合った。決して刹那タソではありません。






話は少し遡る。
ボーリングが終って寮に帰る途中、千草はアスナに呼び止められた。

「烏族を召喚?」

アスナが要求したのは、京都で戦った烏族を呼べないかというものだった。あまりにも突飛な要求に千草は聞き返す。

「できればあのとき呼んだ人がいいんだけど……できる?」
「できひんことはありませんけど……どないしてです?生半可な理由なら了承しかねますえ」
「剣を習いたいのよ。あの人(?)達強かったから、アレぐらい強くなりたいの」
「なんでそこまでネギ先生を助けはるん?元々関係あらへんのやないですか?」
「う〜ん……。なりゆきって言えばそれまでなんだけど……」

腕を組んでアスナは考える。
クシャミ一つで服を消し飛ばされた初日から、図書館地下のゴーレム、吸血鬼騒動、そして京都の事件。魔法を使えるだけの少年が、たった一人で頑張ろうとする姿に、苛立ちと不安が募る。
父親を探すため、ただ前しか見ない少年のために、

「ほっとけない……からかな」

アスナは剣を取る。

「うちが言うのもなんやけど、命の危険だってありますえ?」
「だから習いたいのよ。どんな敵に会ってもあいつを守れるように」

アスナの決意を聞いて、千草は

「呼んでも相手が断れば意味ありまへんよ」
「説得する自信はあるわ」

受け入れ、微笑んだ。



遠くの地から呼ばれた烏族の男はアスナの願いを聞き入れた。毎度毎度呼ばれて還るのはしんどいという理由で、そのままアスナの善鬼になった。
かくして、アスナも師を得る。流派も型もなく、実戦により切磋琢磨された力を。


閑話休題。


己の師から様々な技術を。拙い子供たちはそうやって少しずつ強くなっていくのだろう。

「そういえば、師父から聞いたアルが」
「はい?」
「エヴァの試験は大丈夫アルか?」

組み手を休まず古菲が問う。魔法関係はあまり知らないが、ネギが本来習うべきなのはそっち方面のはずだから、気になって聞いてみたのだ。

「それなんですよ。内容がわからないから作戦を立てられなくて」
「もし師父と戦うのだったらご愁傷アル」

例えネギが100人ぐらい分身できても勝てる見込みは皆無。なにせエナと2人で350体の鬼を始末した実績を持ち、ネギに何故か厳しい。
手加減などしてくれるはずもない。

「だだだ、だとしてなにか攻略法はないんでしょうか?!」
「不意打ちなら最初の一撃で沈めないと確実に反撃され、面と向って戦えばアスナがテストで60点以上取るより難しいアル」
「あんたに言われたくないわよバカイエロー!」

ガスっと古菲の後頭部にハリセンが当たる。
ちなみに古菲の言うことが当たっているなら、アスナがテストで60点を取る確率は0.000000001ということになる。

「じゃあ遠距離からがベターですね」
「それも止められるのがオチアルが、師父は接近戦しかできないから近づかなければ少なくとも負けることはないネ」
「そうとは限らんぞ」

意外な人物からの意見に反応して古菲とネギは組み手をやめ、声のしたほうを向く。

「どういうことですか?火羅凄さん」

太い剣を肩に担ぐ烏族―――火羅凄にアスナが尋ねる。

「京都で戦ったとき見たが、彼奴は確かに時を止める。だが触れたモノは例外。そうなのだろう?」
「えぇ、確かそんなことを言ってました」
「ならばだ、防御に魔力を注ぎわざと一撃を食らう。動けるように………いや、触れたら発動する罠で封印なり拘束なりすればなんとかなる。向こうも人が死ぬような一撃を出すような鬼でもなかろう」

お〜〜、とネギ達は関心する。さすが実戦慣れしているだけあって観察眼は目を見張るものがある。だが、人が死ぬような一撃というフレーズを聞いて、更なる問題が浮き出てしまった。

「エナが相手なら……どうするアルか?」

容赦とか手加減とか優しさとかと無縁の爆弾魔。色とりどりの爆弾に様々な効果を付与し、仮契約カードにより遠・中・近距離の戦闘スタイルを確保し、期間限定でも魔法や気を封印する術を持ち、更に体術も古菲にギリギリ及ばずとも一流。

あれ?おかしいなぁ、主人公より強そうだぞ。

「…………。正直ワシは、奴と戦うぐらいなら神鳴流の小娘と戦うほうを選ぶ」
「エ、エナちゃんてそこまで強いんですか?」
「特殊能力に頼っているのではなく、単純に基礎が出来ている。所謂正攻法という奴だ。こればかりはそれ以上の実力か数を用意せねば話にならぬ。小僧一人ではまず勝てまい」

その場にいる者の脳裏に、カラフルクラスターでぶっ飛ばされるネギの姿が映し出される。鮮明に、それでいて避けようの無い未来のように。

「確か……試験は明日だったわね……。…………お姉さんに手紙出しときなさい」
「な、なんでですか!?なんでそんな暗い表情なんですか!?」
「なんでもないわよ。……ネギ、あなたのこと忘れないから」
「それでなんでもないわけないじゃないですかーー!」

はてさて、ネギの行く末はどうなるのだろうか。








「……………」
「……………(ゥズ)」

静かに押しては引く浜辺の海、パウダーのようにサラサラしている砂、燦々と輝く太陽の下で年頃の男は、

「カーーーーッ!!」
「あう」
「早く泳ぎたいのは分かるがやることやってからNA!」
「あの……普通に砂が熱いんですけど……」

年頃の女に座禅させて背後から渇を入れていた。水泳とまったく関係のないどころか、半分拷問じみたこの所業を律儀に行うアキラであった。

「座禅は熱かろうが寒かろうが、そんなの関係ねぇ!それにタイムはちゃんとチマチマ上がってんだろ?」
「えぇ……そうなんですけど」

レンジに強要されている念修行のおかげで、本当にタイムは上がっていた。ただ座禅をするだけでタイムが上がるという不思議を体験して、うれしいような納得いかないような気分のアキラであった。
しかし彼女はまだ纏をできていない。この辺りは『燃』の理念で体が一時的に向上しているだけである。
いずれは『念』の纏と絶まで教えるということにしてある。

何故『絶』を?と思う人のためにお教えしよう。絶は疲労回復に使える。スポーツをする人間にはちょうどよいというわけだ。

「不満や文句は俺から学ぶことがなくなってから言いな」
「座禅以外教えてもらったことないような気がするんですけど……」
「それとこれとは関係ねぇ!」
「常識的に考えてそれはダメじゃないの?」
「お前達に常識は期待するのは間違っている」

水着を来たエヴァとチャチャゼロを抱いたエナが伴って浜辺に降りてきた。

「話がある。少しいいか?」

エヴァが真剣な顔でレンジに尋ねた。少し考えてアキラに自由時間を与えて席を外してもらう。

「なんだ?ネギ関係か?」
「あぁ。まずはコレを見ろ」

エヴァは一枚の紙切れをレンジに渡す。

「『茶々丸の修理は一日繰り越して日曜の午前に完了します。byハカセ』誰よこの人」
「茶々丸の生みの親で3−Aの生徒だ。京都で壊されたのを直してもらっているんだが、こういうことになってな」

ガイノイドを作れる天才中学生。そう聞いてレンジの顔が少ししかめった。

「ボーヤの試験に茶々丸を使おうと思った矢先にこれだ。お前かエナに代役を頼みたい」
「私はOKしたから、断ってもいいわよ」
「オレニヤラセロー。切リ刻マセロー」
「いやゼロちゃん無理だから」

ネギの知らぬところでとんでもないことが決まろうとしていた。どっちが承諾しても地獄である。

「条件は?」
「能力禁じでボーヤに一発でも有効打を食らえば負け。堅まで許す」
「随分こっちが不利じゃねぇか?能力あっての念だろ」
「そりゃ能力頼りのレンジはそうでしょうよ」

念能力者の中でもヤクザみたいに理不尽なエナにはハンデにならないようだ。

「入試は受かるか受からないか、ギリギリのところでなければ意味が無いだろ?」
「はい正論。………ん〜、どうすっかなぁ……」

たかがネギの弟子入り試験。エヴァもエナもそう考えているだろう。だがレンジはそれだけのことと断定する気は無かった。

考え出したのはつい最近だ。
誰にも知られていない魔法使い達。そして日本の呪術師達。
それだけなら疑うことも無かっただろう。

一昔前に起きた裏世界の戦争で活躍した英雄の息子が、労働基準法すら無視して教師になり、本人は譲り受けた才能を駆使して親を探しだそうとしている。

受け持つクラスには伝説級の吸血鬼、ガイノイドとその製作者。仲違いしているはずの呪術協会の娘を入学させ、護衛するハーフモンスターの娘。
何故か語尾に『アル』つけなきゃ気が済まない衝動に駆られているコッテコテの中国人。

あきらかになにかがあると疑ってくれと言っているようなものだ。

しかし、彼が来る前に勤めていた高畑教諭がいたから今のクラスがあることを忘れてはいけない。

代々魔法先生が3−Aを受け持つものだと決められているのだとしたら、ネギ・スプリングフィールドが教室連中とトラブルを起こすのは信じがたいことに偶然ということになる。

ではここで京都の事件を思い返してみよう。

魔法先生がいることで学生の京都修学旅行に難色を示していた関西呪術協会。それから察するに過去、3−Aが京都へ修学旅行に向うとき魔法先生は着任していなかったのではないか。もしくは意図的に京都を避けていたか。
普通ならば面倒なくことを進められるよう双方が調整するはず。


仮定として、『双方の和解のため学園側が勝手に魔法先生(ネギ)を配置した』のだとしたら。


ある意味本末転倒な気もするが、そういう強引さも必要だとしよう。
ならば、尚更ネギではなく戦い慣れた高畑が行くべきだと思われる。
宿や新幹線など、利用施設の予約は1ヶ月〜?ヶ月前からしなくてはならない。ネギが赴任してくる前から打診はしていたはずだ。無論高畑が担任のままでだ。

なぜネギを京都に行かせたのか。

分かりやすい答えの一つは『英雄の息子』というレッテル。ましてや呪術協会には英雄の仲間と、それと封印した巨鬼がいる。
言わば呪術協会からしても英雄であり、恩人の子息であるネギを無下に扱うことは出来ないとふんでのことか。政治的背景も関わる事態だったのか。

近衛近衛門の誤算。

それが天ヶ崎千草の決起。軽い悪戯の背景に隠された巨鬼の開放。
呪術協会本部の無様も要因の一つ。つまらなすぎる要因である。



以上のことからレンジ・エナ・エヴァの3人がいなければ、ネギが京都で得られる成果はほとんどなかっただろう。
それでも、キーパーソンはやはり彼なのだ。
その理由はパクティオーカードにある。

長距離砲撃(マテリア・ストライク)が出来なければスクナを一撃で葬ることができなかった。宮崎のどかが『イドの絵日記』の存在を知らなければ小太郎に勝っても天ヶ崎千草の罠に負けていた。


どれを見ても偶然以上が見えてこない。せいぜい運がいい、タイミングがよかった。この程度だ。


「確かめてみるか」
『?』

この世界の確信を得るために、レンジはある決意をする。







土曜日、午前0時。

夕方の訓練を終らせたネギ達はアスナの部屋で作戦会議を開いていた。
試験まであと16時間。休憩と復習に費やす時間を併用することにしたのだ。
なにせ試験内容を知られていないものの、実力を見せろというエヴァの言動から想像できることは多くない。

戦うしかないのだ。
なんのために暗い書庫で勉強したのか。なんのために武術を習うのか。
いずれまた出会うだろう白髪の少年に立ち向かえるように。父を探すために。

「朝に話したけども、確認を兼ねて師父が相手のときアル」

どこからか調達した髭の飾りをつけた古菲が吊るされた紙の前に立つ。

「師父の能力は時を『止める』のではなく『止まっていると間違うほど遅くする』ことアル。ん〜ま〜ほぼ止まってると見ていいかもしれないアルね」

随分大雑把な師匠である。これでなぜ特質系なのか。

「問題は範囲がわからないことヨ。京都の鬼達相手で30がどうのって言ってたアルからネギ坊主一人なら更に増えるはずネ」
「ならば開始直後、杖で空に逃げ飛び道具で距離を測る。これしかあるまい」

古菲と火羅凄が紙に図を書いていく。地面にいるレンジを覆う半円形の上に、デフォルメのネギが書かれている。

「カメラマンはんて随分強いんやねぇ」
「そうねぇ、京都じゃエナちゃんと暴れてたし」

ポケー……と図を見ながら鬼退治のことを思い出すアスナ。絶え間なく響く撲殺音と爆殺音は5分と経たず350体の鬼を葬り、鬼達に恐怖を植え付けた。三国無双もビックリャな早業である。
はっきり言って自分も少し怖い。

構えたままの無防備状態で爆弾を当てられれば誰でもお陀仏だろうから。

「………(あれ?)」

ここまできてようやくアスナは思い出した。

「繋がっていれば解除される………」

なんとなしに呟いた一言に反応して、古菲達が一斉にアスナのほうを向く。

「あ、いやね。京都で嵩田さんとエナちゃんが小指に糸みたいなの巻いてたから。直接触れなくても糸で繋がってたら嵩田さんが触れてることになるんだなって思って」
「連結による解除アルね」
「あれ〜?ほんならカメラマンはんの力て繋がってれば効果でぇへんの?」
「よくわかんないけど、そうなんじゃない?」
「せやったらすんごいビラビラした服か体中に糸括り付けとけばええんやないの?」
『それだ!!』

対レンジ用戦闘スタイル発覚。要はいかにレンジとの距離を開けて能力を解除するかである。少なくとも逃げて逃げ切れるような能力ではない。

「能力さえなければ師父はワタシより弱いアル。その方法は上々ネ」

自分の師匠なのに酷い言い草である。

「師父の対策はそれでいいとして、問題はエナアルな」
「あうぅぅ〜〜」

エナと聞いた途端、今まで黙っていたネギがうめき声を上げた。朝に聞かされた絶望的見解をどうにかして打開しようと悩んでいたのだが、結局何も浮かばなかったのである。

わかりやすい例えで言うなら、どうやったら生身で電子レンジに耐えることができるのか。そんな感じだ。

「仮に能力無しという条件でもきつい。こればかりは万事休すとしか言えんな」
「爆弾は魔法で撃ち落せるんじゃないですか?」
「確かに。だが閃光や煙幕は撃ち落しても効果を出す。その隙に距離を詰められれば意味が無い」
「となると、やっぱり近距離は絶対アルな。ワタシの知るところだと近距離用の弾は一つしかないある」

紺色のクレイモアである。単一方向に爆発するそれは鬼の上半身を消し飛ぶ威力を持っている。当然ネギが食らえば、文字通り天国に飛ばされるだろう。

「エナは体術も一流アルが、あくまで我流喧嘩の延長ネ」
「そうは言うが、限りなく効率よく人を殺すために磨かれた拳だろう」

殺すというフレーズを聞いてネギの体がビクっと震えた。

「その通りアル。だからこそカウンターを主とする中国拳法に分があるネ」
「賭けだな。小僧に其れ程の力があるか」
「一週間も練習してへんのやったら無いんやないかなぁ……常識的に考えて」
「試験で死ぬとか殺すとか考えること自体有り得ないのよ常識的に考えて」

アスナはスリッパで古菲達(ネギもついでに)の頭を軽く叩いた。

「いくら戦うからって真剣なものじゃないでしょうが。向こうだって手加減してくれるわよ」
「それは間違いだ。戦いとはいつでも最悪の状況に備えねば」
「試験を前提として最悪な事態を想定してくださいよ!」
「戦う以上死ぬか生きるかしかないアルね。スポーツでも最悪は死しかないヨ」
「ボボボボク、やっぱり死ぬんでしょうか!?」

もうビビリまくっているネギであった。ウルウルと涙を溜めてる様は小動物を彷彿させる。
考えすぎだと、アスナがネギに言おうとしたとき、

コンコン

とドアがノックされた。

『夜分にすいません。大河内アキラですけど、誰か起きてますか?』

随分珍しい客が訪れたものだ。エヴァ邸での出来事を知っているアスナはさっさと玄関へ向った。
ドアを開けると、ほんの少し潮の香りが鼻につく。

「どうしたの?」
「えぇっと、ネギ先生いるかな?」
「なんですか?」

奥にも聞こえたのか、ネギが物陰から出てくる。

「エヴァンジェリンさんから伝言です。試験内容が決まったって」
「その………内容とは?」
「明日の午前0時に世界樹前の大階段に集合。エナさんと一対一で勝負です」
「もうだめだーーーー!!!」

ネギの顔が『T大試験で居眠りしてしまい、残り時間5分のところで起きてしまった男』のような感じになった。

「こうなったアルか。まぁ仕方ないネ」
「うむ。我等はただ祈ることしか出来んのだ」

後ろで楽しそうに話す火羅凄と古菲に向けて、ネギはただただ殺意の波動を送ることしかできなかった。

「ただ、それだとネギ先生は絶対に勝てないということで、あるルールを設けました。ネギ先生が魔法を使うとエナさんも見合った念を使います。逆も然り……つまり魔法を使わなかったら念も使わないということらしいです」
「そ、それは」

魔法使いに魔法を使うなというのはかなり厳しい条件ではないだろうか。そう考えたネギだったが、

「それならなんとかなるかもネ」

古菲は違った。勝つための道が見えたというのだ。

「どういうことですか老師?」
「こっちが使えば相手も使う。つまりエナは念を使うタイミングがネギ坊主よりワンテンポ遅くなるネ。この優位性は計り知れないアルよ。念を使えなければエナもただの人間アル」
「更に時間的余裕もわずかながら出来た。煮詰めればなんとかなるかもしれんぞ」
「やったじゃない。なんとかなるって」
「は、はい」

それを聞いてネギの中から希望が湧いてきた。なんとかなるかもしれない。
少なくとも死ぬ確率は大幅に減ったのは素直に喜ばしいのだ。

「あの、じゃあ今からお願いします!」
「了解ネ。大階段を下見してそのまま公園に行くアル」

ネギが古菲を連れて行き、アスナ達もついでだからと着いていった。
ただ一人、大河内アキラだけはその場で別れる。

ネギの弟子入り試験まであと24時間。
その間にエナと戦うための技術を身に付けるだろう。試験内容を知れば、誰もが対策を取るのだから。

だがネギ達はともかく、古菲は失念していた。

相手がエナ・アスロードだということを。














「今日の午後2時に寮を出て、1時間以内にエヴァンジェリンさんの家の玄関をノックすること」
「そ、それだけ?」

想像していたものよりはるかに楽そうに聞こえる内容だった。ただし、次の言葉を聞くまでは。

「ただし嵩田さんとエナさんが妨害します」
「もうだめだーーーー!!!」

ネギの顔が『T大試験で居眠りしてしまい、残り時間5分のところで起きてしまった男』のような感じになった。

「戦いにおいて最悪の事態………。さすがにこれは予想できなかったアル」
「うむ。我等もまだまだ精進せねば」

後ろで楽しそうに話す火羅凄と古菲に向けて、ネギはただただ殺意の波動を送ることしかできなかった。






最初はこういう展開にしようとしたんですが、思いつかなかったので原作のままにしました。

そろそろオリジナルのシナリオでも書かないと面白くないかもしれないですねぇ。というか書きたい。

ちなみに、この火羅凄(カラス)はチョイ役です。特に活躍することはありません。