幸せを噛締めるためにはある条件をクリアしなければならない。

1、不幸を知ること。

それも生半可なものじゃなく、人生を変えるほどの不幸がいい。手っ取り早いのは全てを失うことだけど、不幸というのは自分だけが起こせるものじゃない。
不幸を得るにもまた運が必要ってこと。

2、幸せを手に入れる。

不幸に立ち向かってもいい。逃げてもいい。その先にあるものが幸せなら手段は問わない。ただし対象が人間等で意志を持っているなら、対象も幸せであることが含まれる。

3、維持すること。

権力・力・金・愛。ありとあらゆる可能性に備えて準備しておくこと。特に金は必須。金で命は買えないけど、護ることも補うことも救うこともできるから。

4、刺激を欠かさぬこと。

それが不幸であっても構わない。とにかく自分が幸せだと忘れないためのファクターがあればいい。



私、エナ・アスロードは今日も今日とて幸せです。



冒頭でこんなこと言っちゃったけど、私の幸せって奴はまだ遠いのよね。
だってレンジにはあと一年おあずけみたいなこと言ったし、愛と力はともかく金と権力は現在皆無。
元の世界ならグリードアイランドの景品で国一つ持てるんだけど、こっちの世界だと流石に……ね。
クーデターぐらい一人で起こせるけどメンドイし。

それどころか、最近は出費が激しい(主に人形だけど)からレンジにお小遣いもらってるし、これじゃあただのヒモじゃん。
これはいかん。絶対いかん。レンジには「頼りになるパートナー(将来は『人生の』が頭に入る予定)」を植え付けるつもりだったのに、日本にまだ慣れない、家事できない、人形にうつつを抜かしてるのダメ三拍子。
ネギ先生じゃないけど、足手纏い以外の何物でもないじゃない。
最近は学園防衛や京都での報酬があったから懐事情はかなりよかったんだけど、エヴァちんと調子こいて買い物しまくってたらヘリウムのごとき我が財布。軽いわ。
そんな理由で、エヴァちゃん家のメイド兼同好の士との語らいは渡りに船だったわけ。
お互い料理できないって知って真夜中にレンジを呼んだのはいい思い出になるんじゃないかな。本人怒ってたけどね。でも血を吸われたくなかったの。許して。

エヴァちゃん家で働いててこう思った。めっちゃ楽。
まず訪問者がほぼ皆無。高畑先生が様子を見に来ることは2度3度あったし、学園長も1度来た。
たったそれだけなのよね。そりゃまぁ15年もやりたくない中学生やらされて、できた友人が片っ端から自分のこと忘れていくんだから作るのも億劫になるわ。

朝は学校一緒だからレンジの弁当持って一緒に行くし、昼は屋上で昼寝。夕方は古菲と念修行という名目で遊んで、更に丸一日休んでから学校行って。
最近はアキラもいるし、ホント遊んでるだけだった。さっさと目覚めてもらいたいからオーラ当てまくったけど。
大変だったのレンジだけ。家事ぜーんぶやってもらっちゃった。

そんな折、ネギ先生の試験に使うはずだった茶々丸ちゃんが修理できてないから代役を頼まれた。
面倒臭いとか弟子は取らないとか言ってたけど、やることは真面目にやるのよねエヴァちんは。
なんか気に入ってるみたいだし、私はどっちでもよかったから適当に負けようかと思った。

そしたらレンジの試してみよう宣言ってなもんだ。
曰く、世界が怪しいってさ。前にも言ったけど、私にとってはここが異世界なんだから怪しくて当然。普通よ普通。だから魔法使いがいても気にしない。
それだけならレンジも気にならないみたい。問題はその都合のよさ。
レンジの持論を聞いても、私はあまり深刻な内容には思えない。
もしレンジが思うとおり、『ここがネギ・スプリングフィールドを主役にした漫画の世界』だとしたらロイソン達みたいに、今度は私たちが同じ時間を繰り返すことになるだけの話。
本来どういう流れになるのか分からないから手の出し様がないじゃない?
そしたらレンジはこう言うワケよ。

「大抵…漫画の主人公ってのは目的を達成するもんさ。言いたいこと、分かるだろ?」

つまり私が負けると。私がどんなに頑張っても負けると。こともあろうにレンジはそう言いましたよ。
確かに負けようとは思ってたけどそれはわざとで、普通にやってあのガキに負けるなんてありえないわね。

OKOK。だったら証明してやろうじゃない。
漫画の主人公なんかに負けるもんですかい。




午前0時、世界樹広場前大階段にて。

「あ〜……今日の対戦相手のエナ・アスロードだが、生理痛が酷くて休むことになった。代わりをレンジに務めてもらう」




女に負けました。





ネギま×HUNTER!第18話「セリフは多いのに一人称が新鮮でした」





エナの不参加を聞いたネギ達は盛大に喜んだ。丸一日かけた練習はムダになったが、相手の実力を考えるとそのムダもかえって心地よい。

「結局こうなるんだ」
「丁度いいではないか。そういうことは自ら証明せねばな」
「できないからエナに頼んだのに〜」

以前から言っているが、レンジに戦う才能は無い。格闘や護身術は、程度はあっても習えば誰でも使える。相手が止まるという絶好のチャンスを生かすなら習うべきなのだろう。

だが格闘より生かす技がある。それが『硬』や『堅』なのだ。
止まっている的に思い切り殴る。関節だのカウンターだの、レンジの能力にそんなものが必要だろうか。

だからレンジは武術より、ただ威力を高める技だけを会得した。

それでもウヴォーに勝てないのは、やはり才能が無いからだろう。

「それでは2人とも、位置につけ」

エヴァの一声でレンジとネギは同じ踊り場に立ち、向かい合った。
ネギの顔は自信に溢れ、勝つ気マンマン。対照的にレンジの顔は暗い。

「ネギ君勝てるやろか」

カモを肩に乗せて心配そうに尋ねる木乃香。

「大丈夫なんじゃない?ルールそのまんまだし、一昨日の朝火羅凄さんが言ってた戦法でやれるでしょ?」
「………魔法を使えば彼奴も能力を使える。ならば使わないに越したことはないが……」
「……………」

アスナは楽観的な意見を述べるが、火羅凄はどこか不安げな雰囲気を隠し切れない。古菲も隣でジッと2人を見つめている。

「いいか、ルールに変更は無いからその辺りは省く。ボーヤがくたばるまでこの男に有効打を当てられれば合格だ」
「わかりました。……くたばるまでですね」

不敵に笑うネギ。考えてることが筒抜けだ。

「では、もう語ることもあるまい」

エヴァはゆっくり右手を眼前に持ってくる。特徴的な形をした指を軽く振って、

「始めろ」

パチンと、小さくそれでいて広場全体に響く合図を出した。

『練』

その瞬間、レンジのオーラが爆発的に増えた。
あまりの威圧感にネギはあとずさる。

「待ちなさいよ!ネギが魔法使わなきゃそっちも変な能力使わないんじゃなかったの!?」

さっそくアスナから抗議が入った。エヴァがルールに変更が無いと言ったのだから、レンジはネギに合わせて念を使わなければならない。
なにもしていないネギに、今の状態は釣りあわないのだ。

「ちょっとエヴァちゃん、反則取りなさいよ!」
「バカを言うなカグラザカアスナ。反則を取らせたいならさっさとボーヤに魔力を解けと言え」
「ネギは魔法を使ってないじゃない!」
「魔法じゃない。『魔力』だ」

エヴァがそう言った途端、ネギがギクっと体を強張らせた。

「貴様は不思議に思ったことが無いか?子供のボーヤが中学生でも足の速い方のお前に難なくついて来るわ、それなりのハードワークだというのにことごとく仕事をこなしているわ。10歳児にそんなことができると思っているのか?」
「それが魔力ってやつとなんの関係があんのよ」
「ここまで言ってわからんか。魔力で体を増強してるんだよ。魔法を習う者なら必ずやることだ」
「マジ!?ちょっとネギホントなのー!?」
「はい。魔法使いなら誰でもできます」

始めの合図が出たというのに二人は動かない。律儀に会話を進めているのか、待ちの状態なのか。

「そういうことだ。戦いの歌を使えば『堅』に、魔法の射手の一つでも撃てば能力発動。ここまでサービスしてやって負けるなら、ボーヤに未来は無い。平凡な魔法使いとして生きればいい。さぁレンジ、ボォッとしてないで攻めろ!」
「あんま動きたくないんだけどな〜」

心底面倒臭そうに頭をかくレンジ。

「まぁこれも試験だ。ここで負けても、もうちょっと強くなってから申し込めばいいさ」
「多分2度と受け付けてもらなさそうなので、今日ここで勝ちます!」
「おぉ?言い切りやがった」

実際レンジは、この戦いでネギが勝利を収めると思っている。
偶然エナが生理痛で動けなくなったと聞いたときから、ネギがエヴァの弟子になることが決定しているのだと確信していたのだ。
今はまだ自分が有利。しかしどんな偶然でネギが勝つのか。

「行きます!契約執行180秒、ネギ・スプリングフィールド!!」
「いいオーラだ。こっちも本気でやってやる!」

『堅』

互いの体から強力な威圧感が噴出す。しかも魔力と気という相反するエネルギーのせいで、2人を中心に強い風が吹き荒れてきた。

その風を突き進んで、ネギが一気に距離を詰める。

「なにやってんの!せっかく向こうが能力使わないって言ってるのに!」

アスナはフェンス代わりの石で出来た手すりをバシバシ叩く。

「否、あれでいいのだ。今の小僧ではああでもしなければ勝てん」
「いくら飲み込みがいいからといって、10歳児が大の大人相手に勝てる道理はないアル。師父が相手なら体術のみで叩くのがベスト」

距離を詰めたネギはとにかく一発当てようと考えた。習っている手数は少ない。
だがここで一撃必殺を当てる意味も無い。要は有効打。
一発でも当たれば合格。

「不用意に距離を詰めるな」
「うわぁ!!」

レンジのヤクザキックがネギの腹に決まった。堅の恩恵で向上した攻撃力のおかげでネギはさっき立っていた場所より後ろへ飛ばされてしまう。
契約によって向上したネギの体は確かに普通以上の力を持つ。実際さっき距離を縮めたときの速さは今まで以上のものだった。
しかしレンジはそれ以上に早かった。ネギが己の目の前でブレーキをかけた瞬間を狙ってのヤクザキックはただ力任せに蹴っただけ。それに反動が乗ったためネギは盛大にぶっ飛んだのだ。

「ゲフッ!……ゲフッ!……」

器官を刺激され咳をするネギ。たった一発腹を蹴られただけなのに足まで震えがきていた。

「確かに俺は、エナと戦って勝てたためしがねぇし、能力がなかったら古菲にも負けるかもな」

バキバキと指を鳴らしながら、ゆっくりネギに近づくレンジ。

「こちとら超サドのチビ中国人やらど変態ピエロと戦ってんだ。ガチンコでガキに負けるほど耄碌してねぇよ」

まぁ結局なにかしらの理由で負けるんだろうけどね――――と心の中でポソっと呟く。
しかも彼は上記の2人とまともに戦っていない。クロノスライサーを使っただけで、決してまともに戦ってない。勝ってはいるけども。

「くっ……杖よ!」

ネギが手を伸ばした先にあった杖が、ひとりでに動き飛んでいく。
その勢いを殺さぬように杖に飛び乗り、レンジの拳が届かない上空へ飛んだ。

「そうよネギ!遠くからなら殴れないわ!」

アスナが拳を振り上げて叫ぶ。元々古菲の案なのだが。

「ラス・テルマ・スキル・マギステル!魔法の射   手、連弾光の50矢!!」

鬼相手に30メートルという有効範囲を警戒して上空70メートルまで飛んだネギは、すぐに魔法の射手を放つ。
止められても避けられてもいい。とにかく何か攻略の糸口になれば。
そんなネギの思いも、目の前の光景で呆気なく崩される。

たった今放った魔法の射手が、すべてネギの目の前で止まった。

「そんな……こんな高さなのに」

止まっている射手の間から、レンジのつまらなそうにしている顔が見える。





「まぁ、こんなところだろうな」

予めレンジにジョイントリングを受け取っているエヴァにクロノスライサーは効いていない。
反対側にいる古菲やアスナ達はしっかり効いているので静かなものだ。

「(おおよそ70……。さっきボーヤの詠唱が途切れたのはそれ以上広がるからか。化け物め)」

あわよくばクロノスライサーの限界領域を知ろうとしたエヴァだったが、この調子だとまだまだ伸びるだろうと判断した。
エナといいレンジといい、やはりどこか狂っている。

「(さて、この勝負の興味もなくなったな………)」

元々ネギが勝とうが負けようがどっちでも構わないのだ。負ければ面倒が無くていいし、勝ってもいびって遊ぶのだから。

「仕方ないな…………レンジ、ボーヤ聞け!!!!」

ちまっと魔力の使って出した大声が広場全体に響き渡る。

「そのままでは埒が開かない。よってこれよりボーヤは魔法、レンジは能力の使用を禁じる!」

エヴァの声がちゃんと聞こえたらしく、レンジはすぐにクロノスライサーを解除した。
途端勢いよく襲ってくる魔法の射手。小さく展開したクロノスライサーを使って、レンジはその全てを避けきった。

それを見届けたネギは地面に降り立った。もう小細工はできない。元々そんな手があったわけではないが、逃げ道を塞がれたのは事実。
契約執行を告げてまだたったの2分。

残り一分で、

「行きます!」
「来いやー!」

決着をつけなければならない。

「(どんなに喧嘩が強くても、懐に入ればなんとかなる)」
『カウンターは中国拳法の得意中の得意アル』
「(防御を徹底すれば避けることだって出来る。くー師匠のように手数が多いわけじゃないんだ。多分大振りの一撃)」
『エナ相手に一撃当てるのは至難。誘って攻撃してきたところをカウンターで返せば一撃くらい当てられるかもしれないアル』
「(エナさんより弱いかもしれないけど、この人だって充分強い。だったら!)」

たった一撃。それが酷く遠い。
しかしネギの目標はこの程度で躓いていいほど楽なものじゃない。例えどんなに困難であろうと、

「たあぁぁーーー!!」

立ち向かわなければならない。

「悪ぃが、俺だって立ち向かわなきゃならねぇんだ。テメェよりデケェ運命って奴にな!」

家族がいる、友人がいる。その世界がかつてと同じ異物だと知ったそのときから、レンジの覚悟は決まっている。
圧倒的なまでの実力差をひっくり返せるほど世界は甘くない。それこそ奇跡でも起こらない限り。
かつてレンジはその奇跡を起こした。多くの仲間と協力し絶対的暴力である王を討った。

ここでネギ・スプリングフィールドを討てば世界の理が崩れ、普通の世界が訪れるはず。
確信もないただの予想。それだけの理由でがむしゃらに頑張っていたときがあった。
この戦いは、その延長なのだ。

「うらぁー!」

掛け声とは裏腹に拳の勢いは弱い。格闘でもよく使われるフェイクの見様見真似である。
それでも充分だった。
覇気に気圧されたネギは、一瞬だけ体が強張った。
完全に無防備になった一瞬の間に、レンジは振った腕を戻してネギの鼻頭に軽いパンチを当てる。

それだけなのにネギの鼻から血が吹き出た。強引な術式でもただのパンチなら軽々防げるぐらいの強化はしているのに、レンジの堅はそれ以上の威力があるということだ。

それでもネギは

「前に!!」

縺れかけた足を、体勢を低くすることで強引に持ち直し、体を更に前へ持っていった。
鼻から垂れる液体も、そのせいで疼く鼻も、全て無視して前へ。

「行ってみろよ!」

グジっと音がした。拳に勢いを乗せるためネギが鼻で息を吸ったのだ。

その瞬間、ネギの体にある異変が起きた。この場に置いて絶対起きてほしくない致命的なそれに気を取られ、ネギの拳に迷いが出てしまった。

「もらった!」

その隙を逃がすレンジではない。これ以上ないぐらい躊躇なく、ネギをくたばらせるために大振りの一撃を放った。

その瞬間

「へっくし!!!!」
ブワァ!!
「なに!?」
「あれ?え、えっと隙有り!」
キーーーン!!

『…………あ〜ぁ』









俺は、ネギと戦ってて思ったんだ。
この世界が漫画の世界で、あいつが主役だったとしよう。
一番不幸なのは………そのことを知ってしまった俺じゃなく、HUNTERのときのみたいに、どこかにいるかもしれない世界に巻き込まれた犠牲者でもなく、主役であるネギ・スプリングフィールド本人じゃないかと。
普通に、平和に。そんなささいなものを手に入れる暇も無く、次から次へと事件が起き、巻き込まれていく。
そして戦い、勝たなければならない。
最終的には都合のいい……それこそ偶然や奇跡を起こす前置きや予兆って奴がほぼ100%報われて、主人公が勝つんだ。
生まれ持った才能や容姿も文章一つ、線一本で決まっちまう。

それだけならただのアメリカンドリームならぬコミックドリームだ。とんとん拍子で成功しちまう。
でもよぉ、今日ネギと戦って思ったんだ。
こいつは、こんなにも頑張ってるじゃねぇかって。
たしかに才能ってやつのお陰で主人公は強くなれる。普通よりずっとな。
才能が無くても、普通より強くなる必要がある。そう思い込んだり、ならざるを得ない状況に追い込まれる。
そして更に強くなるために実戦が用意されてるんだ。
もし壁に当たったら新しい情報で更に強くなる。時には命すら賭けて。
そんなとき大抵の主人公は乗り越えていく。当たり前だ、主役が死んだら物語は成り立たないんだからな。
でもよぉ、本人は真剣なんだぜ?死ぬかもしれないのに、それでもやるってことの辛さってどんなモンだと思うよ?

怪我して病気になって、仲間が傷ついて死んで、大事なモンを天秤にかけられて。
それでも主役ってやつは前に進むしかないんだ。どんなに嫌な思いをしてもな。
世界を救う主役が、実は世界に操られてるお人形だって、そう思ったんだ。

はっきり言えば、元の世界に戻った俺が、ネギをどうこうしようってのは八つ当たり以外のなにものでもないわけだ。
家族がいて、友人がいて、その世界がかつてと同じ異物だったとしても、正直どうでもいいんだよな。
とりあえず『今は』の話だけどな。
これでHUNTERのときみたいに何度も同じ時間を繰り返すことになるんだったら、是が非でもネギの存在を否定してやる。

それまでは………別にいいんじゃねぇかな。

「だから頼む。親より先立つ不幸を味あわせないでくれ………意味無く謝るから」
「師父ーーー!しっかりするアルーーーー!」
「潰レタカ?潰レタンダナ?潰レタッテ言エヨコラ」

久しぶりのネタだが、あ…ありのまま起こった事を話すぜ
『ネギがクシャミしたと思ったらパンツ一丁になってた。驚いた隙を突かれて金的を食らった』
な…何を言ってるのかわからないと思うが
俺も何を言ったのかわからねぇ…
股間がどうにかなりそうだ…
隙があったとかなかったとか
そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わうかもしれねぇ。

つーかパンツ一丁で股間を抑えながら蹲るこの構図をどうにかしてもらいてぇ。
堅で護ってても痛ぇもんは痛ぇんだな。初めて知ったよ。

「あの〜、それで試験の方は………」

さっきまでどうしていいかわからないネギが、看病を古菲に任せてエヴァに尋ねた。顔を真っ赤にしちゃってまぁ初々しいこと。

「へひ!?そ、そうだな。魔力の暴走で武装解除と同じ効果を出したとはいえ、魔法ではない。そして条件である有効打を当てている」

瀕死の一撃だよ。今にも息子が死にそうだよ。

「少し苦しいが……まぁ合格としよう」

少しどころじゃねぇよ。死にそうなほど苦しいよ。

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
「わ、こら!嬉しいのはわかるからその手で触ろうとするな!」

エヴァさん、あんた鬼だよ。もう精神的にもノックアウトだよ。

「ネ、ネギ〜」
「アスナさん、コノカさん、ボクやりました!」
「そ、そうね。でも部屋入る前にお風呂行こうね」
「カモ君……勝ったのになんか皆冷たいんだ………」
「兄貴、大きくなりゃわかるさ。おぉっと、俺っちにも触らねぇでくれよ」

………………。まぁ思春期だからな。特になにも言わねぇさ。カモはいつかぶっ殺す。

「師父〜〜〜……」
「古菲頼む。俺の部屋から着るもん持って来てくれ。俺はこのままだと―――――」
「わかったアル!」

土煙を出して走っていく古菲。セリフぐらい最後まで言わせて欲しかったね。まぁいいか、誰いなくなったところで聞いてみっか。

「なぁチャチャゼロ」
「アン?」
「もしエヴァがネギの修行を真面目にしてやったとして、どれくらい強くなると思う?」
「少ナクトモソンジョソコラノ魔法使イガ束ニナッテモ敵ワナイグライニハスルダロウナ。ナラナケリャ死ヌダケダ。ゴ主人ノコッタ、短期間デ一端ノ魔法使イ並ニスルゼ」
「スパルタか。…………いっそ死ねばいいのに」
「ソレヨリヨォ」
「ん?」
「潰レタノカ?ドウナンダ?」
「……………。食らえ、必殺ゴールデンに触れたフィンガー」
「アッーーーーーー!!」

チャチャゼロを虐めてる間、俺はたった一つだけ、どうしても気になることがあった。

ネギはこうやって師匠を見つけ強くなっていく。それこそ世界を救えるほど強くなるだろう。
なら、巻き込まれた一般生徒はどうなるんだ?
俺やエナはいい。魔法に負けない程度の力は持ってると自負してる。
問題は、アーティファクトを持っただけで裏に関わろうとするバカがいるかもしれないということだ。

古菲はいい。あいつは俺が育ててるんだ。責任は取るつもりだ。アキラにしたってそうだ。深く関わらせるつもりは無い。
ネギはそういう……計画というかアフターサービスというか……どこまで連れて行くのか考えてんのかね。

……………多分考えてないね。
こういうタイプは自分のことしか考えてないか、自分の考えてるようにことが進むとか、自分の考えが相手に伝わってるとか思うタイプだと思うね。ゴンの優等生タイプみたいな奴だと思うね。
俺の勝手な思い込みだがね。








今回もいい展開が書けなかった。前回の伏線を一切活かせてないないしね。
しかも二週間近く空けてこの量。

そんな私を罵るときはアスキーアートを使ってください。(特に気にしなくていいです)