日曜日は一部を除いて、学校に来る人間はほとんどいねぇ。警備の俺は例外だけどな
でも今日、この日は違った。朝っぱらからものものしい雰囲気で教師達が会議室に集まっていた。
下座には何故か俺がいる。

「レンジ君。君が呼ばれた理由がわかるかね?」
「生憎さっぱりですが?」

上座にいる学園長からの質問を首を振って否定する俺。周りを見回すと見慣れない教師もいる。多分一般人じゃねぇかな。
ちなみに言っておくが本気で俺に心当たりは無かった。エナと一緒にエヴァとツルんでいるのは学園長公認。それ以外に気に障るようなことはしていない。と思いたい。
デコピンで人間ぶっ飛ばすのやめろって言われたらどうしようかな。

「それでは瀬流彦君、聞かせてあげたまえ」
「はい。今日の早朝のことです。まだ日も昇っていない時間に、ものすごい音がしたので飛び起きたんです。慌てて音のした場所に行くと嵩田君が住んでいる部屋の玄関が壊されていました」

なんだってー!大階段から直接エヴァの別荘で休んでたから分からなかったぜ。いったい誰がやったんだ。盗るモンなんて酒ぐらいしかねぇぞ。

「中から荒らすような音がしたので確認したんですが、そこに嵩田君本人がおらず、代わりに3−Aの生徒、古菲がいました。彼女はひっきりなしに備え付けのクローゼットから服を引っ張り出していました」

あ〜はいはい。俺が頼んだやつな。ネギにぶっ飛ばされて消えた服の代わりを探してたんだな。
そういえばカギ渡すの忘れてたぃ。

「流石に物取りとは思えなかったのですが、放っておくわけにもいかず彼女に何をしてるのか聞いたんです。すると」

ミスター瀬流彦は一呼吸おいて言った。

「『師父がパンツ一丁で股間が凄いことになってるアル!』と言われたので、今日皆さんに集まってもらった次第です」

俺は初めて、自殺志願者と復讐で人を殺す人間の気持ちがわかったんだ。





ネギま×HUNTER!第19話「普段からセリフが多いので一人称はここまでです」





レンジが必死で弁解している間に、ネギは夕映とのどかを連れて地底図書館に行き、ドラゴンに襲われて大変な目にあったらしい。

もちろんはしょらせていただく。(ォィ

それからまる一日経って、ネギの実力調査が行われることになった。エヴァは都市学園内のよくわからないところにネギと契約した者を含め、レンジ達や千草を連れてきた。
ちなみにアキラと火羅凄はいない。前者は部活で後者は骨休めだ。

「ここなら人目につくこともない。さっさと始めるぞ」

ジュース ザ トマトを飲みながらアレコレと指示を出す。エヴァの前にネギが契約した木乃香、のどか、アスナ、刹那が整列した。その後ろにネギが立つ。

「私達はいいの?」

仮契約をしているのにレンジ達はお預けを食らっていた。

「お前達は魔力じゃなく念……気のほうを主体にするだろ?中途半端に魔力を注がれても力が相殺して力が落ちる」

それを聞いた刹那はやはり―――と呟いた。京都で経験したのだろうか。
だとしたら、ネギは自分で戦力を下げたとも言える。この場合はカモのせいだが、もう少しネギが勉強していればよかったことでもある。全ては今更だが。

「いきます!契約執行180秒間」

4枚のパクティオーカードを経由して、直接本人に魔力が注がれる。
高揚感とでもいうのだろうか、魔力が注がれた瞬間4人の頬が赤くなる。

「慣れないのよねコレ」
「そうですか?私はそれほど…」

刹那はそう言うが、頬が赤くなっているということは少なからず違和感を覚えているということだ。

「うひゃ〜くすぐった〜」
「あう〜」

何度か契約執行しているアスナが慣れないというのだから、当然初体験の木乃香とのどかはいわずもがな。

「次、対物・対魔魔法障壁全包囲全力展開」
「はい!」

ネギの体に纏っていた魔力の勢いが更に増す。この時点で随分の量の汗が浮き出ていた。

「そのまま3分持続。その後北の空に魔法の射手199本。結界張ってあるから遠慮せずやれ」
「は、はい!」
「おいエナ、カップヌードル(カレー)持って来いよ。きっかり3分計ってやろうぜ」
「そこ、ふざけてないで黙っていろ」

先日の恨みが残っているのか、レンジの態度はここのところ氷点下だった。
暇〜、というブーイングを無視し続けて3分。息を切らし、汗だくのネギはすぐに呪文を唱える。

「光の精霊199柱、集い来たりて敵を討て!」

詠唱の終りに合わせて右手を空にかざす。すると何本もの光の弾が帯を残して結界に衝突した。
霧散した魔力がイルミネーションのように輝き、女性陣は見惚れている。

「どう見る?」
「フランクリンの100分の1ぐらいじゃねぇか?数は怖ぇけどよ」
「そうねぇ……だいたいそれぐらいかな。放出の初級にしちゃあいいほうね」

大きさや密度の関係上同一視するのはお門違いだが、例える材料が乏しいためそういう結果に留まった。

「あうぅ〜?」

矢を放った本人は魔力を出し切って倒れてしまった。周りが慌てて看護をする。この男、モテモテである。

「フン、こんなものか。―――――話にならんわ!!」

精神力が切れて昏倒したネギに、エヴァは容赦しない。

「そう言うなよ。兄貴はまだ10歳だぜ?契約4人に障壁展開3分。魔法の射手199本なんざ修学旅行並じゃねぇか。普通なら撃つ直前に倒れてるぜ」
「黙れ下等生物。潰すぞ」

どこを?とまで言わずとも、男の本能でわかってしまったカモは一目散に逃げ出した。
その先がネギではなくアスナというのが、実に彼らしい。

「私を師事する以上、普通だの平均だのといった甘っちょろいことを考えるな。口答えの一つでもすればその場で破門してやる。肝に命じておけ」
「はい、わかりました!」

ネギはフラフラと起き上がりつつ、声を張って返事をした。
本気の言葉だが、面白半分で脅すつもりだったのに馬鹿正直に真直ぐな返事をされてたじろぐエヴァだった。
気を取り直して咳をする。

「さて次だ。エナ、桜咲刹那……前へ出ろ」

ようやく出番かと、エナは体をほぐしながら前に出る。対する刹那は何も聞かされておらずオロオロするだけだった。

「簡単な実験だ、付き合え。お前達神鳴流は気のエキスパートだろ?エナがどうしても戦ってみたいと言ってな」

いきなりそんなことを言われて困るだけである。はじめはどうしようか迷った刹那だが、交流試合のようなものだと思い、承諾した。

「せっちゃ〜ん、怪我せぇへんといてな〜」
「大丈夫ですよ、簡単な手合わせですから。そうですよねエナさん?」
「……………………ごめんなさい」
「なんで…謝るんですか?顔をそらさないでくださいよ!ねぇちょっと!」

ガクガクとエナを揺さぶる刹那。ちょっと顔が必死だ。

「漫才はいいからとっとと始めろ」

ゲシ!と2人の尻を蹴って中央に放り出す。実験に付き合ってもらう立場なのに酷い扱いだ。

「あいた〜。乙女のケツをなんだと思ってんのかしら」
「乙女は絶対『ケツ』なんて言いませんよ」

刹那は夕凪を鞘から抜き、刃を返して峰を前に出す。
本当なら木刀か竹刀があればよかったのだが、生憎ここにはない。

「エナさんも何か持ってください。気で体を強化しても素手で打ち合うわけには」
「お気遣いありがとう。でも、これでも頑丈だから大丈夫よ」

心配する刹那に、エナは手をヒラヒラ振って返す。
頑丈とかそういう問題じゃないんじゃ?と思う刹那だったが、本人がいいと言うのならそれに従うことにした。
基よりこれは試合。死合うわけではないのだから。

「双方納得したところで…………始めろ!」

エヴァの合図に素早く反応したのは刹那だった。
まずは様子見。軽い剣撃でエナの出方を見る。横薙ぎした攻撃を避ければ更に次の攻撃へ。受ければ反撃に備えて素早く下がる。
瞬時に頭が作り上げた戦略に従い、刹那は夕凪を一閃する。
ガギッ!!と音がした。

「な!?」
「へぇ…あなたのところも『周』があるのね」

刹那は目を見開く。自身が認めるほど手加減した一撃だ。避けられるのは当然だと思った。防がれるにしても気を集中させた四肢を使うと思っていた。

しかしエナが使ったのは、たった一束の自身の髪。

元来人の髪は束ねると何十キロの錘を吊るすことができる。細いとはいえ刃の無い鉄が切れないのも頷ける。
だが受け止めたときの音はなんだ。まるで金属がかち合ったようなものではなかったか。

「『周』……とはなんですか?」
「あなたがその剣にやってることよ。念………気で物を強化することを、私達はそう呼んでるの」

エナは受け止めた剣を捌き、そのまま体を前に倒して刹那の懐に入る。

「しまっ―――!」

呆けた隙を取られてしまった刹那は、次の瞬間には来るであろう攻撃に備えて体を気で充満させた。
だが、

「フゥ」
「あひゃぃ!!」

エナは刹那の耳に息をかけただけだった。完全に弄んでいる。

「『纏』より強いけど『堅』まで行ってないわね。持続重視なのかしら?」
「ちょ、ちょっと真面目に――――ひゃ!?」
「『流』はできないの?こんな細い足でアレだけ早く走れるんならできてもおかしくないんだけど」
「だ、だから『リュウ』とか『コウ』とかなんなんで――――ひぃ!?」
「翼は無しか………まさかわざわざ具現してるとか?」
「たたたた戦うんじゃなかったんですかーー!?」
「そういうセリフは私のエロス溢れる手腕から逃れてから言いなさいな。ほ〜らここが弱いんでなくて?」
「こんなの試合じゃないーー!」

刹那がもがいてもエナは体の全てを使って拘束を更に強固なものへとしていった。
あわわ、と戦慄するネギ。当然のごとく興奮している小動物。赤くなっている顔を手で隠しつつも指の間から見る木乃香とアスナとのどかと夕映。呆れた様子で顔をそらす千草とエヴァとレンジと古菲。ガン見している茶々丸。
描写力が足りなかったので気付かなかったが、改めて数えるとこんなにいたようです。

「集団観衆はイヤ〜〜!」

その後、エナの気が済むまで彼女は弄ばれつづけた。

「エナって女好きアルか?」
「あいつは老若男女物人外問わず可愛い物が好きなだけだ。贔屓目しなくても桜咲は可愛い部類にはいるからな」
「…………」
「……。なんだよ」
「師父はロリコンアルか?」
「少なくとも中華娘は狙ってないから安心しろ」
「チョワー!」
「ぐは!」

女心をミジンコたりとも理解していないレンジだった。




「いや〜、もうお嫁に行けへん〜」

刹那の公開レイプが終わり、それぞれは微妙なときめきを心に残しつつ解散した。

「気にしたらあかんよせっちゃん。なんならうちがもろうてあげよか?」
「ふつつかものですが………ってちがうぅ!」

一人だけ心に大きな傷を残していた。
そんなほのぼのとした場所で、

「このアホーーーー!!!!!」
「へんでろぱ!!!!」

ハリセンの小気味良い音とアスナの怒号、ネギの意味不明な悲鳴が轟いた。

「もう知らないわよ、勝手にしなさい!!」

怒り心頭のままアスナはその場を去った。

「ま〜たやりやがったなあのガキ」

もう助けるのもバカらしい。そんな態度でレンジもその場を去った。さっさと別荘で休みたいのだ。
茶々丸が帰ってきたので食事を作る必要もなくなり、万々歳すべて元通り。



「そう思っていた時期が、俺にもありました」



エヴァ邸では古菲とエナが楽しそうに会話していた。それだけならよかったのだが何故か帰ったはずの夕映やのどか、千草までいたのだ。

そのあと帰ってきたエヴァと連行したネギ達。ギュウギュウ詰めになるほど大所帯になってしまった。

当然エヴァ邸で食事を取ろうとしていたレンジ。しかしこの状態で自分だけ食べるわけにはいかず、結局全員の分の食事を作ることになる。

茶々丸が手伝ってくれるのが、唯一の救いだった。

「申し訳ありません。私一人では時間がかかってしまいますので」
「いぃいぃ、わかってる。その代わり嫌がらせのごとく高カロリーのおかずばっかり作ってやる」

今頃2階ではエヴァが魔法使いの心得を講義しているところだろう。時折叱声が聞こえる。

「だいたいなんであのガキ共がいるわけ?」
「夕映さん等はエナさんが連れてきたそうです」
「あいつが?また何か変なこと考えてんじゃねぇだろうなぁ」
「なるべく別荘以外での破壊活動は控えてもらいたいのですが………」
「いざとなったら俺が止めてやる。はいよ、豚の油部分のみで作った角煮」
「そんな露骨なもの作らないでください」

レンジの中でネギとその仲間の位置はかなり下のほうらしい。
そんな微笑ましい会話をしつつ、2人は次々と料理を作っていく。

「ごめんくださ〜い、茶々丸の様子を見に来たんですけど〜」
「いらっしゃいませ、ハカセさん」

マタフエタorz






総勢11人+α。そのうち男は2人しかいないとくれば、それなんてギャルゲ?である。
しかしこの場にそんな雰囲気は無い。

「うまいアルうまいアル!」
「肉ばっか食べてんじゃないの!」
「おいそれ……脂身しかないのによく食えるな」
「おやまぁ、この煮付けよくできてはりますなぁ」
「あぁ、ちゃんとした御飯なんて久しぶり〜」
「この鳥唐おいひぃ。せっちゃんも食べてみてぇ」
「あ、いや、その、鳥唐はちょっと……」
「なんでこんなに油っ濃いものばかりなんですか?太ってしまうです」
「偶然だ」
「ネ、ネギ先生〜、これおいしいですよ〜」
「デ、デビルフィッシュですかこれ?」
「おかわりはありますので、遠慮しないでください」

花より団子、色気より食い気。もうだれが喋っているのかすらわからない。
育ち盛りにいい雰囲気を期待してはいけない。

「なぁエヴァ」
「なんだ」
「あんた前に言ったよな。更に増えていきそうな悪寒がするって」
「あぁ言った」
「ここまで一気に増えるとは?」
「思わなかったさ」
「…………」
「…………」
「飲むか?」
「飲もうか」
「はいはい、言いたいことはわかるから、現実逃避はちょっと待ってね。やりたいことがあるから」

どこからか取り出した一升瓶で酒盛りをはじめようとした二人をエナが止める。
このカオスを作り出した張本人が、とうとう動いたのだ。
何故エナがわざわざのどか達を呼び止めたのか。

「個人的に気になることがあったから、ここらではっきりさせたかったの。ただね」

エナはセリフを一端区切って、周りを見回す。

「私と皆の感覚が違うかもしれないから、間違ってたら遠慮なく言って欲しいの」

まぁそれぐらいなら――――。特に断る理由もないので、曖昧ながら皆頷く。

「それじゃあ始めましょうか………ネギ先生」
「え?」

得物を追い詰めた獣のように、エナはネギを睨んだ。

「私は転校してきたし、魔法世界のことも全然知らないの。だからなのかなぁ………ただの学生が裏に関わってるのが凄く変に見えるの」

そう言われた瞬間、ネギだけでなく夕映とのどかもギクっとした。

「宮崎さんはわかるわ。仮契約したし、京都でも活躍したんでしょ?それは納得できても、その隣にいる子がここにいるのは納得できないのよね」

エナの指がスイ〜っと動き、のどかからネギと次いで夕映に向けられた。

「さっきアスナと口論してたとき大まかに横聞きしたんだけど、一体どういうこと?」
「えと……あの、それは」
「私がお願いしたです」

あたふたと慌てるネギの代わりに夕映がはっきり答えた。

「私とのどかは純粋にこっち側のことを知りたいと思ったから、ネギ先生に無理を言って連れてきてもらったです」

ネギを庇うわけではなく、自分の本心をさらけ出す。のどかも無言で何度も頷く。
こう言えば誰も責めることはできないという打算も少しはあるが。

「2人の熱意がネギ先生の心を動かした?美談ねぇ」

エナの口調が少し穏やかになった。
しかしレンジは知っている。それが嵐の前の静けさだということを。

「だとしてもアンタに落ち度があるのは変わらないわ」

表情と口調が一瞬で変わった。マフィアの娘という裏の顔が出たのだ。
ドスを効かせた口調もさることながら、体中から迸る威圧感に圧倒されて、慣れていない者は息を呑む。

「一般人に魔法を知られれば記憶を消すんじゃないの?そもそもなんで裏に関わるようなことを一般人に依頼したのよ。コ○インの純度を一般人に調べさせるようなもんじゃない」

図書館地下が魔法関係であることは明白。そう考えれば大量の罠の意図もわかるというもの。
その場所のヒントを記した地図など、どう考えても魔法に関することだとわかる。
それすらネギは気付かず、夕映達に地図を渡したのだ。
もしくは気付かないとタカを括ったか。

「挙句の果て、アスナに言ったアレ、何?一般人だから関係無い?あれだけ頑張った人に言うことがそれ?助けてもらうだけもらっといて、終ったら赤の他人?あ〜あ、ご立派な教師だこと」
「そういう言い方はないではないですか!?」
「うるさい」

堪らず夕映が抗議する。いくらなんでも言い方が酷い。
しかし、声を張った夕映よりエナのたった一言が、夕映と同じことを思っていた者の心を縛り付ける。

「言い方云々じゃない。私の言ってることが間違ってるかそうじゃないか。あんたらはそれだけ考えてればいいの」

横暴。そう言い表すのに十分な言い草である。だが言い返せる者はいなかった。
元々言い返す気が無い者だけでなく、たったそれだけを言われただけで怖気づく者もいた。
気に慣れている刹那ですら圧倒されている。
そして、皆が黙っているという事実が、エナの正当を証明していた。

「ねぇ綾瀬さん、あなた京都で襲われたとき、逃げたわね?」
「そ、それは……」
「なにビビッてんのよ。それが正しいんじゃない」

エナの顔が少し柔和になった。

「戦えない人の絶対目標は生き残ること。後ろで刹那さんが死のうが、ネギ先生が死のうが、ただ走りつづけて逃げること。それを踏まえて、あの状況で援軍を呼ぶなんて芸当が出来たのは上出来以外のなにものでもないわ」

誉めてくれるのはいいが、もう少し言葉を選んで欲しい。そう思う夕映だった。

「でも自分から裏に関わるのはバカのすることよ」
「どういうことですか?」

もう一度、エナの顔に鋭さが込められる。

「今日みたいな危ない目にまた遭うってこと。でも今の貴女に抗う術は無い。だから誰かに助けてもらうしかない。自分の勝手に他人を巻き込む人を、日本じゃ馬鹿って言わずになんて呼ぶわけ?」
「今日のことは誰も予測してなかったから起こったことです。それだけでは関わってはいけない根拠にならないです」
「あら、危険ってやつは宣言してから来るのかしら?」
「毎日のように危ない目に遭う訳じゃないです。物事は原因と結果で成り立つです。今日私達が出遭った危機のように。…………それに、予め知っていれば回避することも可能です」
「ん………確かにそれも正論ね」

論理に関して、綾瀬に軍配があがるのは当然と言えよう。しかし、

「ファンタジーを信じといてドラゴンの前でボケっとしてた人が言っても説得力ないけどね」
「くっ……」

反撃を忘れないのがこの女である。しかし何故そんなことを知っているのだろうか。茶々丸に聞きでもしたか。

「まぁいいわ言い返せるってことは自分を持ってる証拠。やりたいようにやってみなさい。後悔するのは誰かが傷ついた時でしょうけど」

不吉なことを言い残して、夕映との会話を終らせる。

「話が反れちゃったけど答えは出たかしら、ネギ先生?」

先生として敬うような口調ではなく、相手を困らせるような言い方が、まるで脅迫のように聞こえる。
ネギはただ俯き、濁流のように押し寄せる思考を整理するのに精一杯だった。

「そもそも魔法使いで――――」
「エナ、その辺で許してやれ」

さらに言及しようとするエナに待ったをかけたのは、意外にもレンジだった。
これにはエナだけでなく、エヴァも怪訝な顔になる。

「お前の言いたいことはよく分かる。こいつのやることは無茶苦茶だし、周りのことも全然考えてない」

やはり根に持ってるのか、エナ程とはいかずとも酷い言い草である。

「だがな、お前は根本的なことを忘れてる」
「なによ」
「こいつがまだガキだってことだ」

そう言われてネギはむっとする。
だが相手がレンジだからか、強く出ることが出来ず黙ったままだ。

「母国語と日本語を話せて、中学の教師、一目置かれる魔法使い。それだけ見れば確かに天才少年だろうよ。だがこいつが10歳だってのを忘れんな。お前は……ネギを過大評価しすぎだ」

そう言われて、エナからようやく威圧感が消えた。

「そう…か………確かに………あぁ、失念してたわ。似てたもんだからつい……」

頭痛を堪えるように額に手を添える。その姿は、さっきまでの鬼気迫る雰囲気が嘘のように、小さかった。

似ていた、というのはもちろんゴン・フリークスのことである。
天性の才能で僅か一年でモラウを殺してしまうところだったと豪語できる力をもった主人公。
馬鹿と天才紙一重という言葉の体現で、鋭い一言を出すことがあれば誰でも分かるようなことを自身の考えに沿って、それを否定する。

似ている、と言うにはあまりにも似すぎた。

「あぁ、ごめんなさい。なんか色々勘違いしてたみたい。許して」
「え!?いや、あの……分かってもらえればそれで……」

突然の謝罪に慌てるネギが、もうなにがなんだかわからず曖昧な返事をする。
勝手に議論を始めて勝手に完結したのだ。戸惑いもする。

何を分かってもらったのか、おそらくネギはわかっていないだろう。

とにかくこれで拷問のような時間から解放されたのだ。そう思う面々に安堵の表情が浮かぶ。
ただ一人、エヴァの怪訝を残して。






食事が終わり、今度はネギから相談を受けることになった。
夕方、どうしてアスナが怒ったのか分からないため、皆の知恵を借りることになったのだ。
しかし問題はすぐ解決。女心を隅から隅まで理解しているエナと常識的に考えれる夕映の助言で、原因がネギの発言にあることを的確に示した。

夜も更けたので、帰って直接謝るということで落ち着き、用事の無い者は次々とエヴァ邸を後にした。

食器の後片付けを茶々丸に任せ、エヴァ達は早々別荘に向う。
古菲とエナは簡単な手合わせで遊んでいる間、エヴァとレンジはおあずけを食らっていた酒を飲んでいた。

「ネギの修行にここを使う気か?」
「そうだな。教職の合間にチマチマやっても意味が無い」
「ガキんちょ共にバレるのも時間の問題だな」
「そうなるな。まったく……面倒臭い」
「(その割りには、ちゃんと教えてやるんだよなぁ)」

難儀な性格をしている女である。
返杯、また返杯。そうしていくうち、あっという間ボトルから酒が無くなる。

「お開きか」
「まだ飲み足りんが、まぁいいだろう。その前に一つだけ聞いておきたいことがある」

氷だけ残っているグラスを弄びながら、顔を赤くしているエヴァは顔をあわせようともしない。

「さっきエナを咎めたのは、それが目的ではなくボーヤの心証を貶めるためではないか?」
「は?」
「一見エナの勘違いで収まったが、出された質問にボーヤは答えていない。少なくともそれだけの非があるということだ。極めつけは過大評価という言葉だな。アレでボーヤのイメージはかなり下がった。他の者が反論する前に話を終らせたところといい、随分えぐいことをしてくれる」
「ふ〜ん、そういう見方もできるんだな」
「白々しい」
「根拠の無いこと言われても困るんだよ。話はアレで収まった。それでいいじゃねぇか」
「ふん。そう言うことにしておこう。お前達がなにをしようと、私には関係ない」

何もかも見透かしたような、余裕の笑みを浮かべるエヴァは、小さくなった氷を口に含む。
口を塞ぐようなものを含む。その意味を悟ったレンジはそっとラウンジを出て行った。

「(一体何を考えている………。面白くはなりそうだがな)」

カリっと、エヴァは口の中の氷を砕いた。









カオスな内容ですが、私の頭の中が一番カオスでした。
何がやりたかったのか全然わからねぇ。
やっぱりプロットを書いた方がいいのだろうか。(自分は大まかな流れすら決めていません。成り行き任せです)
そんな私を斬新にののしってください。