『定期健康診断』

社宅のポストに入っている封筒に大きく書かれた6文字。どうやら学園で働く者全員に行っているらしい。しかもご丁寧なことに裏の関係者用の医療魔法が使える医者を用意しているとのこと。

度の強い酒を常飲するレンジにとって避けて通れない道である。

今日一日の予定が決まり、おもむろに携帯電話を取る。
履歴の最初にあるエナと書かれたデータを押し、数回のコール音。

「もしもし、用事が出来たから」
『メールで済ませ』

全てを言い終える前に電話が切られる。
なんだかんだ言っていても面倒くさいことは極力避ける。彼女はそういう女だった。

ただ、彼女はまだ日本語をマスターしていない。





ネギま×HUNTER!第21話「グダグダもここまで続くと慣れてくる。え?無理?メンゴ☆」





「それじゃあアスナさん〜……12行目の文を翻訳してください〜」
「また!?」

指名されたアスナはブチブチと文句を言いながら席を立った。

「ん〜………彼……は…言った。私はあなたと………の縁を永遠に切りたいと希望します……。言葉は剣に化けて……落下した……あなたを討ち取る………」

足りない頭をフル回転させて、ようやく2行しかない文章を読み終える。

「単語はいくつか合ってたんですけど〜、変な文になってますね〜。ここの訳は『我、久遠の絆断たんと欲すれば、言の葉は降魔の剣と化し、汝を討つだろう』になります〜。希望は『WISH』ですので欲しいとは違いますね〜。気をつけてください〜」
「ていうかなんの文よこれーー!!」

ハムスターに勝てなかったのです。

「それじゃあ今日はここまでに〜……」

チャイムが鳴り授業が終る。いつもならそこでクラスが騒がしくなるのだが、今回は少し違った。
何故かやつれているネギが教室のあらゆる場所にぶつかりながらフラフラと出て行ったからだ。
いいんちょを始め彼を心配するもの多数。
そんな中、ただ心配するだけでは留まれない者がいた。

無論アスナである。

「ま〜た隠れて何かやってんだから……絶対つきとめてやる。パートナーとして扱ってって言ったばかりなのに」

そう決意し、今はネギを尾行している最中。

少しして、ネギはエヴァンジェリンと古菲が合流。アスナは古菲を追っていた夕映とのどか、朝倉と鉢合わせになり、一緒に尾行する羽目になった。

またしばらくして、偶々通りかかったこのせつコンビと千草が、面白そうだいう雇い主の意見により合流。

大勢がこそこそしてれば怪しまれるだろうと、千草は気を利かせて認識阻害の札を作動した。
これでアスナ達は後ろ指指され組(死語)にならずにすみ、安心して尾行から追跡へ変えた。

サラサラと降っていた雨が本格的になり始めたころ、ネギ達はエヴァンジェリン邸に到着し、さっさと中に入っていく。

それを見届けたアスナ達も急いでエヴァ邸に侵入した。もちろん不法である。

ロビー、キッチン、寝所。果ては風呂トイレまで探し回ったが、家の中は神隠しでも起きたのかと思うほど静かだった。

「みなさん、こっちになにかあるです!」

少し反響が効いた夕映の声が響く。迎えに来たのどかに案内してもらい、地下室の人形が安置されている部屋の奥に辿り着いた。ジオラマが入った大きな瓶を夕映が囲んでいる。

「なんなのこのボトルシップみたいなやつ」
「わからないです。さっきのどかが何かを見たそうなんですが……あまりにも突拍子過ぎて……」

オドオドしているのどかに代わって夕映が説明。しかし彼女も事情を知らないので、結局本人に話を聞く。

「えぇっとぉ、この広場っぽいところでネギ先生とエヴァンジェリンさんが戦ってて、この建物の中でエナさんが始終ぬいぐるみと戯れてて、下の浜辺で2人の古菲が戦いあってて、水の中に大河内さんそっくりの人魚が泳いでたんです〜」
「なんですかそのカオス」

前半2つはともかく、残りはたしかに突拍子しすぎている。刹那が呆れるのも当然と言えよう。

「そんなこと言ったって中には誰も………あれ?」

アスナが少し瓶を注視していた間に、彼女の周りから人がいなくなった。

「みんな〜、どこ行っちゃったの〜」

誰もいない空間で、アスナの声は虚しく反響する。






んで





「もう可愛いわ!なんて小憎たらしいぐらい可愛いのかしら!」

少女はひたすら狐のぬいぐるみを擦りまくり、

「おぉう!?そこで回し蹴りをするか!さすが私アル!」

2人の同一人物は互いに切磋琢磨し、

「…………」

人魚は駆けるように海を滑り、

「失礼します」
「くっ!」

機械の従者は目からビームを出し、

「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ」
「うわーーー!」

小さな人形は大小様々なナイフを投擲し、

「ダイ・アモン直伝『吸血破壊光線』!」
「ひぃーー!!」
「これが決め手としてそれなりに有効な『吸血破壊光線』だ。一ヶ月以内に覚えろ」
「そんなの出せませーん!!」

真祖の吸血鬼も目からビームを出したりして、まさにカオスが広がっていたという。

「む、貴様等そこで何をしている」
「こっちのセリフよそれはーー!!」

感じ慣れない気配を察知したエヴァが振り向くと、口をあんぐりと開けたクラスメートがいた。
いち早く我に返ったアスナが叫び、彼女の大声に気付いた面々は手を休める。

「古菲とエナちゃんはともかくなんでアキラさんまで!?ていうかなんで人魚?!いつ分身の術なんて覚えたのよ!目からビームってなによ!」
「アスナ落ち着いて〜」

一気にまくし立てるルームメイトをなだめる木乃香。

「はぁ……。仕方ない、説明してやろう」

とうとうこの日が来た。そう思い、重い重い溜息を吐くエヴァだった。






その頃那場は犬を拾って持ち帰った。





エヴァはアスナ達に別荘のカラクリとそれを利用してネギを鍛えていることを伝えた。
魔法の不思議に驚き、さらに丸一日修行をしているネギにも驚く。

「その人達がいるのは何故です?」

夕映がエナと古菲とアキラを指す。

「師父に弟子入りしたら入れてもらったアル」
「私も同じ」

一人に戻った古菲とエナの紫弾で元に戻ったアキラが答える。

「くーへが分身してたんは魔法なん?」
「私達は念しか使えないアル」
「京都でも楓さんも分身したです。それと同じことですね。そういえば嵩田さんは?」

弟子がいるのに師匠がいないのはこれいかに。
そう思って聞いてみる夕映に、エナは彼女の後ろを指差した。

そこには負のオーラを撒き散らしているレンジがベンチに横たわっていた。除夜の鐘のような効果音がオプションで流れる。

「あの方どうしはりましたん?」
「自業自得なのよ」

エナ曰く、肝臓が引っかかったらしい。無論飲酒のし過ぎで。
しかもかなり酷い状態のようで、酒は一切禁止のうえ食事制限までされたという。

「いつかなると思ってました。だから控えた方がいいって言ったのに」
「今は何言ってもムダよ。そっとしといてあげて」

前々から忠告していた刹那の一言で、

「鬱だ死のう」

レンジの負のオーラが増した。皆さんも飲みすぎに注意しましょう。






その頃那場は年端も行かない少年にパフパフを経験させていた。





「こらうまいアルこらうまいアル!」
「肉ばっか食べてんじゃないの!」
「おい、それはジュースじゃないぞ!」
「まぁまぁ固いこと言わないのエヴァちゃ〜ん」
「おやまぁ、この佃煮よくできてはりますなぁ」
「綺麗な夕日や〜」
「そうですね」
「ところで手羽先あるんやけど、せっちゃんも食べる〜?」
「いじめですかお嬢様………」
「ア〜ウメェ。酒ハヤッパリ最高ダナァ」
「この性悪人形………」
「ネ、ネギ先生〜、これおいしいですよ〜」
「またデビルフィッシュですか!」
「おかわりはありますので、遠慮しないでください」
「すみません、おかわり」

日も沈んだので宴会に突入。大食漢の古菲用に食料は補充されていたのでエヴァ秘蔵の食料が使われることは無かったという。

そして宴会が終わりかけた頃、少し酔いが回ったエヴァに夕映とのどかが切り出した。

「魔法を教えて欲しいのですが」

元々それが目的でネギに話を持ちかけたのだ。ここまで来て習わない手はない。

「一から教えるほど私の基準は低くない。習うならそこの担任に習え」
「というわけで、お願いしますネギ先生」

エヴァに断れるのは計算のうちだったのか、あっさりネギに懇願する夕映だった。

「い、いいんでしょうかマスター」
「勝手にしろ。どうなっても私は知らんがな」

いっそクラス全員にバラしゃいいんだと投げやりなお言葉を返す。
流石に迷うネギだが、ここまで来たからにはしょうがないと思い、初心者用の杖を取り出した。

「これを振って『プラクテ・ビギ・ナル・アールデスカット』と唱えてください」

そう言ってお手本を披露する。杖の先に小さな火が灯り、夕映とのどかから拍手が送られた。
そういう面白そうな雰囲気を見逃さなかった木乃香達も参加し、広場のあちこちで呪文が唱えられる。

「楽しそうだね…」
「アキラちゃん達はせぇへんの?」
「コーチに止められてるから……」

意地でも魔法関係に関わらせないつもりなのか、アキラはこれでもかというぐらい念を押されていた。

「私達はできますから」

呪術を使える千草と刹那は指先から同じような火を灯す。

「こういう感じで」

エナはビー球程の赤い弾を指弾の用に撃ち、柱に当てて火を灯す。

「キャーースゴーい!うちもやるえーー!」

身近なところに成功例があるためか張り切る面々。だがそう簡単にできるほど特殊な力は軽いものではない。
ただ、杖を振り回している姿は微笑ましくもあった。

「そうまでして魔法が使いたいのかねぇ」

洗い物を終えたレンジと茶々丸が広場に戻ってきた。
酒が飲めないため、手にはノンアルコールのビールが握られている。
結局こいつは飲むのだ。

「暗くて・気に・なる・ビールでスカッと…てか」
「もじるな。くだらん」

黄色い声が響くことを除けば、別荘はおおむね平和だった。





その頃那場は野菜のネギの神秘を実践しようとしていた。





散々叫んで疲れたのか、日が沈んだ頃にはみんな簡易ベッドで安らかな寝息を立てていた。例のごとくレンジは離れた場所で寝ている。

だが時間が経つにつれ一人、また一人とベッドから起き上がってくる。

現在アスナはネギの記憶の中にダイブ中。その様子をのどかのアーティファクトで盗み見しているのだ。
本当に彼女達は面白そうなことを察知する能力に長けている。

「エナちゃん、千草先生、なんか面白いことやってるよ」

古菲、夕映と起こしていき最後にエナを揺さぶる朝倉。

「ん〜………パス。どうせネギ先生絡みでしょ」
「だから面白そうなんじゃん」
「別にいいわ〜。夜更かしは肌の大敵だし」

エナがそう言った途端千草の体がビクっと震えた。それを目の端で捕らえた朝倉はクスっと笑い、

「そっか。興味が沸いたら見つからないように来てね」

そう言って木乃香達と庭へ向った。

「本当によかったんどすか?」
「ネギの過去なんて興味ないわ。誰が死んで誰が生き残っても、今のネギが馬鹿やってることに変わりないもの」

もう話すことはない――――と言うように、エナはベッドから降りて奥の方に向う。

「貴女も寝るんだったらどこか行ったほうがいいわよ。どうせ騒がしくなるんだから」

まるでそうなることが分かっているような口ぶり。それほどまでに彼女達を知っているとでもいうのか。

エナの忠言が真になったのはわずか数分後のことだった。






その頃那場は野菜のネギを意地でも使ってやろうと意気込み少年を襲おうとしていた。





『お邪魔しましたーーー!』

別荘の中で丸一日過ごしたアスナ達は外へ出た。夜空は曇っていて盛大に雨が降り注いでいる。

「それじゃあ、また来るから別荘使わせてね」
「別に構わんが、あまり薦めんぞ。歳取るからな」

千草がビクっと震えた。しかし木乃香が訪れるなら彼女に拒否権はない。

「別に2・3日ぐらい歳とってもいいじゃん」
「若いから言えるセリフだな」

平気な顔でのたまう朝倉に対して千草の心の中に殺意が湧いた。

「それではコーチ、また明日」
「グッバイアル、師父!」
「おう、寝る前に纏を忘れるなよ」

皆がそれぞれ別れを告げ、エヴァ邸に残ったのは家主と従者とレンジとエナだけになった。

「お前達はどうする?」
「この雨だしなぁ、今日は泊めて―――――ん?」

雨の中を傘なしに帰るのは御免こうむりたいと思っていた矢先、仕事用に持たされた携帯が鳴った。
つまり、これから臨時の仕事があるということである。

「…………もしもし、ガンドルフィーニさん?」
『退勤したあとですまない。さっき森の中で妙な力場が発生した。動ける者全員向わせているから君はエナ君を連れて向ってくれ。臨時報酬は出すと学園長から賜っている』
「了解。すぐナビを送ってください。確認次第向います」

携帯を切る。その直後、画面にビーコンが点滅した。

「つーわけだ。行くぞ」
「拒否権は無いのかしらね、ホント。じゃぁねぇエヴァちゃん」
「あぁ」

レンジとエナはずぶ濡れになっても、構わず森の中へ走っていった。

「……………」
「どうしましたマスター」
「いや……気のせいだろう………」







その頃学生寮では金髪美人委員長がお昼に食べたパスタをピュルっと出すところだった。







魔力に似た力場を観測して10分。強く振る雨でぬかるんだ地面に冷たい空気。本来誰も好んで居るはずのない場所に2人の男が立っている。
その周りには何人もの魔法使いが人垣を作り、2人を逃がさないようにしていた。

男の一人は茶髪でカジュアルな服を着ている。そこらにいる普通の若者と同じだ。
もう一人もまた青年で額に妙な刺青をして、オールバックにしている髪から靴にいたるまで黒い色で統一されている。

嵐のような雨の中、男2人が傘を持たずに森の中で何をしているのか。
魔法使い達の誰もが思う。少なくとも一般人ではない。

なぜなら彼らはコレだけの人間に囲まれているにも関わらず物怖じしていないからだ。

ただのチンピラ魔法使いなら対処は簡単だが、2人から魔力の気配は一切しない。それが返って魔法使い達が対処を踏みとどませる理由になる。

どうするべきか。そう考えあぐねていたとき、相手の方から動いた。

「こりゃ失敗か?」

何を失敗したというのだろう。別働隊でもいて時間通りの結果を得られなかったとでもいうのか。

「なにぶん初めてだからね。帰りは心配無いと思うけど」

茶髪の男、黒い男と口を開くが、それは魔法使い達を一切眼中に入れていないものだった。
その態度が気に食わなかった魔法使いの一人が一歩前に出る。

「君達、所属と目的を述べたまえ。質問に答えない場合我々には君達を拘束する権利を与えられている」

脅しも兼ねて4本のサギタ・マギカを出現させ、杖の先に魔力を集める。
しかし、2人の男は意に介した様子も無く、

「ホラな、絶対失敗だこれ」
「そうみたいだね。じゃあ帰ろうか」

そう言って黒い男は懐に手を入れた。

「抵抗とみなし実力行使に移る!」

職務に忠実というのもあるだろうが、無視されてカチンときた魔法使いは牽制にサギタ・マギカを放った。
弾はレジストされることなく2人に着弾する。
それが切欠になり、傍観していた魔法使い達も捕獲するため詠唱を始めた。

「ウンデキム・スピリトゥス・アエリアーレス・ウィンク――――うわ!」
「フリー・ゲランス・エクサ――――きゃあ!」

だが効果を発揮する前に、茶髪の男が投げたナイフが杖を2つに切り裂いた。
魔力を込めたパンチ程度の威力がある魔法の射手をまともに受けたというのに、2人は蝿でも止まったのかと言わんばかりに、当たった個所を掻いていた。
傷どころか痣の一つもできていない。

「先に手ぇ出したのはそっちだ。文句は言わせねぇからな」

『バリエーションナイフ――臨機応変の牙』

茶髪の男の手に大の大人ほどありそうな大剣が現れた。契約カードでも呼び寄せたわけでもない。男は何も唱えず、何も使わずに剣を『具現』させた。

「不法侵入みたいだから明らかにこっちが悪いんだろうけどね」

『スキルハンター――盗賊の極意』

黒い男も相方に習って右手に本を出現させた。

「ついでに何かパクッて行こうか」
「ざけんな。さっさと片付けて帰るぞ」

ハイハイ。黒い男はそう答えて、本を持っていない手に大きな風呂敷を具現した。

得体の知れない技を使う侵入者に、魔法使い達は警戒して足を止める。

「そのままジッとしてろよ。何もしなけりゃ俺達はすぐ帰る」
「(くっ……まずいな)」

ガンドルフィーニの額に汗が流れる。
どんな事情にしろ、学園に侵入してきた者を黙って帰す訳にはいかない。

しかしこういう日に限って主戦力である高畑はおらず、エヴァンジェリンも何故か来ない。
上記の2人以外で使えるのはもう嵩田レンジとエナ・アスロードしかいないのだ。
彼らが来るまで足止めをすればガンドルフィーニ達の目的は果たされる。
レンジの妙な術なら捕縛は容易い。

「そうもいかなくてね!」

だからガンドルフィーニは銃を構えた。役目が決まっているのなら殉じることに恐れは無い。

「馬鹿が」

術を施し殺傷力をなくした弾がフルオートで射出されるが、茶髪の男は巨大な剣を盾代わりにしてやり過ごす。

そして弾が切れた瞬間を狙って、また小さなナイフを何も無い掌から出してガンドルフィーニに投げようとしたとき、

「ロイソン!!」

その言葉に反応してその場にいる全員の動きが止まった。
声をした方を見ると、息を切らせたエナがそこにいた。
妙に早い到着を不思議に思うガンドルフィーニだったが、彼女と一緒に来ているであろう青年のことを思うと安堵の溜息が出る。

「……エナ?」

信じられない。そんな顔をしてロイソンと呼ばれた茶髪の男は呟いた。

2人は躊躇するように一歩、また一歩と歩き、

「エナ!」
「ロイソン!」

我慢できずに走り出した。人垣も左右に割れ、二人のために道が作られる。
まるでドラマのワンシーンのようだ。
雨が降る中、長年別れていた恋人が会うような。

2人の距離が縮む。そして互いの手が触れるところまで来たとき、

「死ねーーーー!!」
「テメェが死ねーー!!」

紺色の弾と巨大な剣がぶつかり合った。


だぁーーー!!


そこに居る誰もが予想していた展開と180度違う結果にずっこける魔法使い達。ガンドルフィーニまでも、頭からずっこけて頭を泥だらけにしていた。

『チィ!』

紺弾と剣の威力が同等だったのか、見事に相殺した一撃に舌打ちして、紺弾と巨剣のぶつかり合いが始まった。

唖然とする一同。ガンドルフィーニも、すぐ隣に黒い男がいるというのに呆然としていた。

「一体どういうことなんだぁ?」

そこに第三者の声がした。
振り返ると、いつの間にかレンジが黒い男とガンドルフィーニの間にいた。

「や、久しぶり」
「あぁ。………まだクロロでいいのか?」
「もちろん。彼もロイソンのままだ」
「そうか」

安心したようにレンジはつぶやく。
クロロとレンジが呼んだ男はスゥっと拳を前に差し出し、レンジは軽く叩き合わせ,

「元気そうでよかったよ」
「お互い様だね」

二度とは会えぬと思っていた、かつて共に戦い世界と喧嘩した友との再会だった。




一方その頃。




「塗るだけでお手軽全身パック、ぬるぬる君X!!」

明石裕奈が通販で買ったという液体薬用液が浴場で大流行していた。美を追求するようになる中学三年生である彼女達にとって、美がつくものはとりあえずなんでも試してみようと思うものである。

そういうことには疎そうなハルナさえ喜々として塗っているのだ。他の者の注目度も伺えるというもの。

湯船に入れたほうが効き目があるらしいが、共同浴場なのでさすがにそれはしないらしい。
故に今浴場に浸かっているのは真に興味がない者と、触感が嫌いな者と、

「ちょ!また変身してるアル!」
「隠せ!タオルで隠せ!」
「あぅ〜あぅ〜」

ちょっと切羽詰ってる者たちだけだった。
小さなタオルを全て使ってアキラの足を隠す朝倉。しかし逆に不自然極まりない。

「アキラさん、パルが帰って来る前に直してください!」
『ね〜、誰か呼んだ〜?』
「な、なんでもないよ〜」

偶発的に能力を目覚めたまではよかったのだが、たった一日二日で使いこなせるほど念は甘くない。

主の意思に反して発動してしまった能力は、アキラの脚を魚に変え、ついでに貝殻の水着や珊瑚の飾りまで具現させてしまった。
そのような姿をクラスメートに見せるわけにはいかない。なんとかして解除せねば大騒ぎ必至だ。

しかし、すでに大騒ぎしている古菲達だが、何故か離れた所にいる長谷川千雨や佐々木まき絵まで大騒ぎし始めた。
特にまき絵の慌てっぷりは尋常ではない。

理由はわからないがとにかく好機と考えた朝倉達は、騒ぎに便乗してアキラを外に運ぼうとした。

「逃がさな〜い♪」

そのとき、彼女達の背後から巨大な影が現れた。
それがなんなのか確かめる時間すらなく、古菲達はアキラもろともぬるぬるした何かに浴槽の底へ引きずり込まれた。

「こ、これは!?」

立って腰までしかない深さなのに、更に下へ引きずり込まれる朝倉は、その異常性の正体を察した。

それを示すように、彼女の目の前にせせら笑う少女の顔が浮かび上がる。





更にもう一方の665号室では

「やあウェアウルフの少年。元気だったかね?」
「…………ぅな……」
「なに?」
「俺を少年て言うなーーーー!!!」
「な、何事!?」
「名前で呼べーーーー!!!!!」

少年の魂の叫びが響いていた。
彼の名前は、この物語ではまだ一度も出ていない。

「チクショーーーーーー!!!」

哀れ。










注ダイ・アモン

漫画バスタードに出てくる「真祖」の吸血鬼。必殺技「吸血破壊光線」は術者の目から光線を出して対象を破壊する。圧縮率が凄いのか、かなり細い。



直伝と言っているのでダイ・アモンはこの世界のどこかにいます(笑