プレっていうのは『それ以前』とか『その前』って意味なんだって。ネギに教えてもらうまで全然知らなかったわ。
この学園じゃ規模や著名度もあって、外から出店が来るのよ。屋台なんて全国単位で来てるみたい。

祭りの雰囲気が少しずつ濃くなっていくから本格的に開店するところもちらほらある。
学祭準備で残ってる人の夜食にもなるし。うちのクラスは超包子があるから縁はないけど。

食べ物以外だと射的とか人間的当てとか金魚救いとか。縁日と変わらないわね。

学祭一週間前だけあってスタッフだけじゃなく一般客もウキウキしてるのがわかる。
かくゆう私も、今日はちょっと緊張してる。
いつもより念をいれた化粧に、友人と選びに選び抜いた服。待ち合わせ場所には30分前から。
本番さながらの緊張感は、予行演習として申し分ない。

「待たせたな」

待ち合わせ15分前。なんだかスネークっぽい渋い声が後ろから聞こえた。






ネギま×HUNTER!第28話「幕間・神楽坂アスナ 後編」






そんなに遠くない上空で飛行船がビラを撒き散らしながら広報を喚き散らす。
二人で歩く道には大勢の人たちが右往左往して、活気が出ている。
でも、肝心のデートはというと。

「おい神楽坂」
「は、はい!?」
「どうしてもタバコ吸わないとダメなのか?」

あまりうまくいってなかったりする。

「噴かすだけでいいんで、お願いします」
「デートをするのにタバコ吸えと言われたのは初めてだ」

わざわざ高畑先生が吸ってるのと同じ銘柄を使ってもらってます。
顔が渋いのはいいんだけど、やっぱりこういうオプションが雰囲気をガラっと変えてくれる。
目を閉じれば……ホラ、高畑先生が隣にいるみたいで。

「はいはいごめんよ〜〜」
「痛ぁ!!」

横から来たカートにぶつかっちゃった。そうよね、歩いてるのに目ぇ瞑っちゃだめよね。

「何してっだぁオメェ」

忘れてください。
あぁ、なんかデートって雰囲気がドンドン消えていく。







どことなくぎこちないデートをするレンジとアスナ。恋愛初心者の彼女ならともかく、なぜか渋いオジサマまで情けない。
女経験が乏しいのだろうか。更に情けない話だ。
だが、そんな2人に救世主が現れた。

「今、私の力が求められている」

ご存知エナ・アスロードと他1名(+1匹)。
仕事を代わると言っておきながら堂々と2人を尾行し、行く据えを見守っていた彼女だったが、レンジのあまりにも拙いリードにとうとうキレた。念が凄い勢いで迸っている。

「せっかく2時間かけてコーディネイトと化粧したのに何?そのリアクション。ナメてんの?しかもさっきからブラブラブラブラ、ただの散歩じゃないの!」
「エ、エナさん、あまり大きな声を出さないほうが」

迸る念に気圧されてあまり強く出れないネギ。元々彼女が苦手なのだからちょっとした拷問である。
だが忠告した甲斐はあった。エナの念が少し引っ込んでくれた。

「アスナのカードを寄越しなさい」

念は引っ込んだが機嫌は最悪らしい。底冷えするような声で命令されたカモはすぐにアスナのパクティオーカードを渡した。

カードを額に当ててスゥっと息を溜め、

「このグズ!!!!」
「あ、アスナさんが凄い勢いでずっこけた」

女の高い声が超大音量で頭の中から響いたわけだから、驚きと脳内シェイクで足がもつれても仕方ない。

レンジに助けてもらいながら起き上がったアスナは引っ切り無しに周りを調べる。
そのあとカードによるテレパシーだと気付いたのか、服をわさわさと弄るが、生憎カードは入ってなかったらしい。

「そのまま聞きなさい。今から私の指示する通りに動くこと。反論の余地無し。いいわね」

有無を言わさぬ迫力が声だけでも伝わってくる。傍から見ているカモすら戦慄しているのだから、当人はたまったものじゃないはずだ。

「ゴートゥーザ・マイコーディネートロード」

怪しく光る目は決して凝をしたわけではない。しかし、パクティオーカードを睨む瞳には炎が宿っていた。









一方、もう別の場所では、一組の美男美女が学園内を一緒に歩いていた。

「えへへ〜、せっちゃ〜ん」
「おぉおお嬢様、そんなにくっつかれると………/////////」
「や〜ん、デートなんやから名前で呼んで〜」

彼女が積極的で、しどろもどろになる彼の姿はなんとも初々しい光景である。微笑ましく見れるカップルなど昨今では大変珍しい。

「デートと言ってもフリでしょう?」
「うちはフリやなんて思とらんえ〜。服もホラ、気合入れてん」

チョィンと刹那(♂)の前でポーズをとる。気合入れたというセリフに偽りは無く、化粧や服の念入り様は確かにすさまじい。質の良い和服にほんのり薄化粧は一見何ともないが、色彩のバランスが実によい味を出している。
まだ少し幼いが、京都美人の血は伊達ではない。

対する刹那(♂)は全体を革で統一してワイルドな感じで仕上がっている。肩にかけた細長い筒は少し似合わないが、端整な顔の前ではたいした問題ではない。
衣服提供は彼の神だとか。

「美しいですよ、お嬢様」
「も〜、またお嬢さまゆうた〜」

誉められたのは嬉しいが、これではせっかくのデートが興醒めだ。ダメだ、早くなんとかしないと――――そう考えた木乃香の行動は早い。

「名前で呼んでくれんと神様に言いつけるえ〜」
「ほな行こうかこのちゃん」

だんだんレンジの位置が木乃香より上になりつつある刹那(♂)であった。

仲良く手を繋ぎ、一路映画館へ。







異性に慣れる。多分それがカモの意図だったんだと思う。確かに小さい頃から高畑先生一筋だったおかげで同じ年頃の男性と話したことなんてほとんどないから、そういう意味ではカモの作戦は的を得てたんだ。

でも、土壇場になって何故かエナさんから作戦変更を伝えられた。

テレパシーで指示を出すエナさんが言うには、『デートとはいかに自分の魅力という槍で相手の心を刺し、ガードを弱めるか。愛を掴むには戦わなければならないのよ』ということらしい。

わざわざ嵩田さんを選んだのも、それなりに鈍いからという理由があってのこと。つまり高畑先生も鈍いってことなのかな。

『鈍くないなら極度のサドよ。あんたが恋焦がれて悶えてるのを楽しんでんの』

ちょっと、高畑先生の悪口言わないでよ。

『自分が好意を持ってるって知ってるのに放置されてる。これほど性質の悪いものはないでしょうが。それでアスナはそんなことないって否定するんでしょ?』

当たり前よ。この学園に高畑先生ぐらい紳士的な人はいないわ!

『だったらイコール鈍感ってこと。今回のデートはそういう相手用に行くわよ』

慣れるじゃなく攻める。エナさんらしい恋愛論だと思った。
でも、私の声は聞こえてないはずなのに、なんで私の思ってることわかったんだろ。



テクニックその1、密着する。


『これは簡単。人が大勢いるんだからはぐれないようにっつって腕を絡めて』

さすがに恥ずかしいから手をつなごう。と思った矢先

『ちなみに手を繋ぐのはご法度よ。緊張して手汗が出るんだから。本番で緊張せずにいられるんならいいけど』

ダメだ。この人には全て見透かされてる。親父属性のカモなんかよりよっぽど頼りになるけど、逆に恐ろしい。
仕方なく私は嵩田さんと腕を組んだ。理由はさっきエナさんが言ったのと同じ。

『はいそこで胸を押し付ける』

え!?

『もちろん今はしなくてOK。本番にとっといてね』

ホ、ホントに胸押し付けるの!?

『多分今、ホントに胸を押し付けなきゃならないの?って思ってるでしょ。別にしなくていいけどアプローチはそれぐらいしないと効果ないわ。逆に考えなさい。好きな人の体温を体で感じたいと思うの』

ぐっ、最後のは妙に説得力がある………。騙されてるような気がしなくも無いけど。
ま…まぁ今はしなくていいわけだし、別にいいか。


テクニックその2、腹を満たす。


『人の持つ欲求は数限りないけど、普段から表に出てくるものの代表はそれしかないの。デートしてる最中に他のことを考えさせないために、ある程度の欲求解消は不可欠よ』

途中でお腹が鳴っても困るでしょ――――と最後に付け加えられた。
要は食事。適当なカフェでいいかな。私達は都合よく開いてたメイドカフェを使うことにした。

『ワンポイントアドバイス。なるべく屋内にしなさい。外だと顔見知りに発見されやすいから、場合によっちゃ話し掛けられて弄くられることもある』

何か嫌な思い出でもあるのかな。声が少し低くなった。



「神楽坂はこの学園に住んで長いのか?」

料理を待つ間が暇なので取り留めの無い話を開始。

「はい。だいたい6〜7歳ぐらいに転校して」
「高畑先生とはそのときに?」
「ずっと世話をしてもらったんです。頼る人がいませんでしたから」
「悪いことを聞くが、親の類いは?」
「思い出せないんです。高畑先生も知らないって」

なんか尋問臭い。でも相手がオジサマだからベラベラ喋っちゃう。あぁ、今はこの趣味が憎い!

「6〜7ということは小学校か………。それ以前のことは?」
「う〜ん、……忘れ…ちゃいましたね。小さい頃なんてそんなものじゃないですか?」

頭が悪いとか記憶力が無いとか、そういう単語には触れない。悲しくなるから。

「馬鹿言うな。俺は幼稚園に上がる前のことだって少しは覚えてるぞ。年寄りみたいにン十年も前ならともかく、たった十年そこらだろ。病気でもない限りそう簡単に忘れるもんじゃない」

それは暗に私が痴呆症の気があるとおっしゃってるんでしょうか。泣きますよ。割りと本気で。

「魔法使い………記憶を消す…………さて、何が出るか」

何か思うところがあったみたいで、ブツブツと考えに耽り始めたので会話は中断した。
でもホント、なんで忘れちゃったんだろう。



テクニックその3、少し疲れさせる。


『なるべく人が多いところ、もしくは騒がしい所にしなさい。ずっと歩き回るのもいいけど、映画とか劇を見るのもいいわ』

デートなのに疲れさせるの?

『望ましくは2人共ね。でも高畑先生のことだからそう簡単には無理。だからこの場合、アスナが疲れるであろう状況を作るの』

なんだろう、意図が読めない。
でも私は指示に従う以外の道を知らない。あぁ……だんだん操り人形っぽくなってきた。



「そんなこんなでやってきました映画館」
「説明御苦労さん」

シーズンってわけでもないから目立って良さそうなモノはなかった。
おかげで人は少ない。待ち時間は気にしなくてよさそう。

『今回ワンポイントアドバイスは無し。好きなの選びなさい』

と言われてもな〜。どれもB級ばっかりでそそられるものが………。

「ん?おい、あれ近衛達じゃないか?」

嵩田さんが指を指すを方を見ると、今上映が終ったドームから客が出てくる。その中に確かにコノカと刹那さん(♂)がいた。
向こうもデートみたいだから邪魔しないように隠れたけど……。

「なんで皆泣いてるんだろ」

なぜか出てきた客が全員泣いていた。もちろんコノカも例外じゃない。
みんな口々に究極の純愛とかどうとか呟いてる。

ちょっと興味が湧いた。嵩田さんも同じみたい。
看板を見てみると、可愛い女の子が写ってるのになぜかホラーって書いてる。
タイトルは『Song of Saya』だって。
ますます興味が湧いた。

「大人と中学生一枚ずつプリーズ」

販売所のおばちゃんから券をもらっていざ。






「えぐ…えぐぅ………」
「こ、この歳になって映画で泣くことになるとは……」

さっき出てきたコノカと同じように、涙でグシュグシュになりながら映画館を出た私たちはさっさと人気のないところに向った。こんな顔誰にも見せられないもん。

本番はこの映画だけはやめとこう。



テクニックその4、雰囲気を出す。



『何泣いてんの?』

なんでもないです。…………って、どこで見てるの!?ここ建物の屋上なのに!

『キョロキョロすんじゃないの。最終テクニックは雰囲気を出すこと。アスナはどんな方法を思い浮かぶ?』

え?えぇっと………。2人きりで夜の………どこか学園を見下ろせる場所とか?

『夜に2人きりで学園を見下ろせる場所とか考えたでしょ』

だからなんで私の思ったことをそうやってズバズバ言い当てるのよ!
いや、むしろこれって王道かな。

『贅沢を言えば座れる所がある場所にしなさい。相手に体を預けれるようにね。立ってると相手が離れちゃうことがあるから、まずは座って動きを封じること』

もう恋愛のノウハウなんて微塵も見えてこないわ。すごい物騒な話にしか聞こえない。
とはいえ実践している私がここにいる。

『座っても腕を絡めるのを忘れないで。そのまま体を預けて―――そうそうそんな感じ。あとは告白まで持ってけるように会話を巧みに誘導しなさい』

ど、どうやって?

『当日にならないと意味無いけど、映画の内容とかどうでもいい日常の話とか、とにかくなんでもいいわ。帰ったら適当にレクチャーしてあげるから終らせて戻ってきなさい』

は〜い。







「今日は一日ありがとうございました。無理言って付き合ってもらって」
「役にたったとは思えんがな」
「そうでもないです。楽しかったですし」

もう日が傾き始めて、空がオレンジ色に染まっている。思ったより長い時間デートをしていたみたい。

「本番もこの調子でいけるといいな」
「それを言われると………」

途中からエナさんが乱入して、別の意味で緊張しちゃったからその辺りはあまり参考にならないかな。デートは参考になったけど。
あんまり言いたくないけど、外見だけはエナさんが来てからソレっぽくなった。
正直成功なのか失敗なのかわからない。だからとりあえず楽しかったと言っておく。

「ところでなぁ神楽坂」
「はい?」
「自分の過去が気にならないか?」

随分突飛な話だ。今回のデートとなんら関係ないじゃない。
だいたいそれってカフェで暇つぶしに話したことでしょ?

「古菲からヘルマン事件のことを聞いたんだが、随分妙な体質らしいじゃないか」

あんのバカイエロー、なに人の秘密話してんの。あ、別に秘密にしてないか。

「エヴァに確認取ったんだが、ソレは両手で数える程度しか使える奴がいないとよ。ただの一般人が偶然持ってるにしちゃあ、お前には不自然な所が多すぎる」

エェ…と……例えば?

「例えばそうだな………足が速い。専門で鍛えてる桜咲と同じスピードだぞ?」

え〜。でも美空だって私と同じぐらいなのに。あいつは一般人……………だと思うけど。
ネギが来てから妙におとなしくなったから、なんか怪しいなぁ…。

「仮に天涯孤独だとして、魔法使いの高畑先生が引き取って魔法使いが常任する学園に連れて来られた。ここは偶然かどうかわからんが………少なくとも高畑先生がこの学園を選んだのは魔法使いが大勢いたからだな。出張でほとんど居なくなる自分の代わりが欲しかったんだろうよ」

そりゃ保護者が度々いなくなるんだから当然じゃないかな。知らない人に面倒を見てもらうわけにもいかないし。

「最後に仮説だが、これは俺にもよくわからん」
「というと?」
「お前は常に『魔法は効きませんよバリヤー』が張られてるわけだ」

なんてネーミング。間違ってないけど。

「もしお前が魔法関係者で、過去になにか不都合なことがあって高畑先生が記憶を消したとしたら、記憶を消す魔法は効いてるということになる」

え?あぁそうか、考えてみれば。…………ってちょっと待って!もし私が魔法関係者じゃないって証明されると、私が昔のことを忘れたのは本当に痴呆ってことに!?この歳でぇーーー!?

「ようするに微妙なんだな。高畑先生に聞きゃあ早ぇけど、簡単に言うワケねぇし」

私は痴呆………私は痴呆………私は痴呆………だから頭が悪いのかな………。

「記憶を取り戻したり―――とかはできねぇけど、断片なら見せることぐらいできる。興味がわいたら別荘で呼んでくれ…………神楽坂?」

そういえば英語とか一夜漬けしても忘れたりするし………なんだろう、本格的にやばいんじゃ

「…………。デコピンインパクト・ミニマム」

あいた!

「か、嵩田さん!?」
「なに考えてっか知らねぇけど落ち込むな。記憶がどうとか深く考えても意味ねぇだろ」

あ、いえ。どっちかっていうと痴呆の方を気にしてるわけで。

「過去がどうだろうと、今のお前は変わらねぇんだ。それを忘れんな」

すいません、いいこと言ってるんですけど空回りです。私そこまで過去に拘ってません。
でもとりあえず

「はい」

と言っておく。

あぁ、なんか今日は微妙なデートだったなぁ………。
渋いオジサマといれたのはよかったけどね。









7割ほど書いて、マッド博士の整形マシーンでタカミチ顔にしたレンジとデートさせればよかったと後悔しました。
書きたいことは書いたのですが、今まで以上にグダグダというか変な文章になってorzです。
素直に、今回はすいませんでした。
沙耶の唄いいよ沙耶の唄