最初に気付いたのは明石裕奈だった。

「ねぇ、ここのブロック組み立てたの誰〜?」

教室の隅に鎮座しているセットを指して周りに尋ねたが、誰も返事をしない。
学園祭の準備をはじめてから、こういった出来事は多々起きていたのだ。もう誰も不思議がったりしない。

いつのまにかセットが完成している。

普通なら大騒ぎだ。幽霊騒ぎ―――よくて不法侵入騒ぎだが、

「ラッキー!これなら前夜祭前は眠れるじゃん!」

すでに幽霊やらなんやらを体験しているので耐性ができていた。このクラス、やはり普通じゃない。

「靴屋の小人ならぬ教室の小人か〜、いいネタになりそう」
「こういうときでも漫画のことは忘れないんだね」

ペンキで絵を書いているハルナに苦笑するアキラ。

「なんでアキラさんがここにいんの?」
「あのセットの担当私だったから」
「へぇ、ラッキーだねぇ。じゃあここを赤で塗りつぶしてくんない?」
「うん」

次の日にはハルナの担当も終ることだろう。
3−Aは今日も平和だった。



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No.026  7人の働く小人
入手難度 : A   カード化限度枚数 : 20
主人が寝ている間だけ、代わりに働いてくれる小人。
ただし主人の能力を超えるほどの要求には応じない。
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ネギま×HUNTER!第29話「幕間 大河内アキラと………」






彼女の一日は何気に早い。
麻帆良学園都市全体が祭りで盛り上がる中、一人誰もいない温水プールに来ていた。
一応部長なので出入りは自由らしい。

学校支給の水着で50メートルもの距離を水泳選手ならではのスピードで往復している。
プールサイドにはストップウォッチを構えているスラムィがいた。人がいないから余裕である。

もう4回も往復して、彼女はようやく水から上がった。

「お〜ほ〜〜、2分11秒だぜ御主人。公式記録とどっこいじゃねぇか」
「よく知ってるね」

タイムではなくスラムィの博識ぶりに驚いてどうする。

「なんだよ〜、やっと念とかいうのが制御できて部活に出れたんじゃねーの?」
「うん………そうなんだけど」

あとちょっとで中学生の公式記録を抜くと言われたのに、彼女の顔は優れない。

「なんか……拍子抜け……かな」
「………あぁ」

なんとなく理解したスラムィはウォッチを置き、体を崩してアキラの周りを旋回する。

「ズルしてるとか思ってんだろ」
「……………」

的確な意見に俯く。体の筋力や体力は一切変わっておらず、むしろ練習に出なかった分衰えていると思っていた。
それが座禅をしてわけのわからない能力を練習しただけで、以前の記録を抜いて公式記録の目前まできた。

しかも、

「今の、全然本気じゃなかったんだ」
「ありゃま」

これにはスラムィも驚いた。このままでは世界記録も余裕でブッチぎりそうである。
そもそも裏の人間が表の大会に出ることはない。問答無用で怪しまれるからだ。
中学生が世界新記録を出すなどフィクションだけ。

「魔法も似たようなもんだがよぉ、あいつ等も随分変わってんよなぁ」

変わっていると言うより非常識。やることから成す事まで全て。

「早く絶を覚えよう」

そうすればこんなことに悩む必要はなくなるだろう。そう決意して、アキラは更衣室へ向った。
このあと部活で催すたこ焼き屋とクラスの準備がある。急がねば。

待っててね――――そう言い残して、彼女はプールから消えた。

手持ち無沙汰になったスラムィはいつもの少女の姿に戻ると、水面を歩いてプールの中央に立つ。
しばらく主人が起こした波を眺めていたが、

「エーミッタム(解放)」

両手を広げて短い呪文を唱える。すると彼女(?)の体が弾けてプールの水に吸い込まれていった。



「おまたせ」

しばらくして、制服に着替えたアキラが戻ってきた。

「次はどこだよ?」
「屋台の準備かな」

服の裏にスラムィを潜ませ、波一つ立ってないプールを出て行く。








学園のとある広場に着いたアキラは妙な人だかりを見つける。

「イカ一匹50円!金魚一匹この価格!超包子御用達、新鮮魚類は魚屋『嵩』をご贔屓に!」

人だかりの中心でレンジが商売に勤しんでした。
際限なく増える魚をどうにかするため、ついに学園祭で魚類を使う屋台にまでヘルプを求めたという。

ちなみに一日一匹増える不思議ヶ池だが、一日経てば2匹、次の日には2匹が4匹になるので、2の24乗=16777216(とんでもない数)になるという。

そうならないように茶々姉が管理しているらしいが、やはり増える一方とのこと。

超包子が全面的に仕入れを承っても焼け石に水で、近々学園の給食や学食にまで手を出す計画まで出ている。

そんなわけで、魚屋『嵩』は学園の魚事情を賄っていると言っても過言ではなくなりつつあった。

今日はそのデモンストレーションのために来ているらしい。

「なにやってるんですかコーチ」
「小遣い稼ぎ」

並べられた水槽に書いている値段は格安の格安。元手がタダだからこそ可能な値段と言えた。
おかげで今この瞬間にも契約数はウナギのぼりで増えている。種類にばらつきがあるが、学園祭前夜までには調節できるだろう。
ただあまりにも安いため収入は雀の涙なのが辛いところである。

「すでにお好み焼き、金魚すくい等各種屋台。麻帆良チェーンの飲食屋全般、スーパーにいたるまで契約している。学園祭中だけでも結構稼げるはずだ」
「やりすぎです」

人手とか経理は考えているのか。いろいろ心配な面もあるが

「身内びいきとしてタコは無料で進呈してやる」
「お手伝いします」

タダの魅力の前には些細なことだった。








朝の作業が終ったので学校へ。

レンジは小太郎他2名と合流して被り物で登校する生徒を撃退しに向い、スラムィは別荘でチャチャゼロと決着をつけに行った。今のところ全戦ALL引き分けだ。

そしてアキラは

「それじゃあアスナさん、127ページの前文を訳してください」
「また私!?」

英語の授業を受けていた。学園祭前だからといって学業はおろそかにならないらしい。
今日もまたアスナが意味不明な文を訳すことになる。

周りもいつも通りで、ご愁傷様とかなにか面白い訳でもしてくれないかとか、ある意味順当な反応を見せている。
だが、今日は少し違った。いつもは自信のないアスナが、不敵に笑って席を立ったのだ。

「えぇ……『俺の親友が言いました。俺達は政府や誰かの道具じゃない。戦うことでしか自分を表現できなかったが、いつも自分の意志で戦ってきた』」

挿絵に書かれている渋いバンダナオジサマのセリフを、どもらず、間違えることなくアスナは言い切った。予想外の結果は静寂という形で教室を満たす。

「ネギ先生、訳し終わりましたけど?」
「え!?ぁ……はい、完璧……ですね」

ありえないことが起きて呆然とするクラスにアスナの声が大きく響く。名を言われて我に返ったネギも、いまだに状況が把握できていない。

注目を一身い浴びながら、アスナはあやかのマネをして優雅に席に座った。

ジィっと見ているアキラに彼女は軽くウィンクして、小さな時計を見せる。



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No.059  即席外語スクール
入手難度 : A   カード化限度枚数 : 20
ここで勉強した時間が専用タイマーに加算される。
このタイマーを押している間だけ、外国語が堪能になる。
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そんなこととはつゆ知らず、クラスメートは授業が終った途端騒ぎ出す。
どんな反則を使ったのか、明日には地球滅亡か。

「私が勉強できるようになったらそんなにおかしいか!」

あたりまえじゃん――――口に出す者出さない者と様々だが、良心を持っている一部を除いた全員の気持ちは一つだったという。





放課後

「ねぇ、ここのペンキ塗ったの誰〜?」

小人はきちんと仕事をこなしたそうです。





そして別荘へ。





「お邪魔しま〜す」

水着を持参してやってきた別荘にはすでに多くのクラスメートが訪れていた。
アスナは即席外国語スクールでひたすら勉強している。タイマー式のため、この機会に溜めておくようだ。

ちなみに、このスクールの存在をネギは知らない。それどころかグリードアイランド産のアイテムは全てエヴァの所有物と勘違いしている始末。

別荘のようなものを持っているのだからその勘違いも充分打倒と言える。

そんな彼は現在

「ケノテートス・アストラプサトー・デ・テメトー ディオス・テュコス!(来たれ、虚空の雷、薙ぎ払え。『雷の斧』)」

ようやく教えてもらった目からビーム以外の魔法を練習中。



アキラは一生懸命練習しているネギの邪魔をしないように遠回りして建物に入った。すると

「は〜ん、ええわぁ、せっちゃんええわぁ」
「おぉおぉぉお嬢様〜〜〜」

少し広い居間のような部屋の中心で木乃香と刹那(♂)が戯れていた。
一見すると木乃香に弄ばれて刹那(♂)が困っているようだが、よ〜く見ると刹那(♂)の顔は微妙に余裕が見える。

的確な言葉が見つからないが、あえて言うなら……そう

「(計画通り)」

こんな感じだ。



どこか遠い住人になったっぽいクラスメートの邪魔にならないように、アキラはそっと部屋から出て行った。
そのまま階段を下りて次の階へ。

『一万跳んで72、一万跳んで73、一万跳んで74』

古菲と小太郎が並んで腕立て伏せをしていた。暑苦しいことに、2人の背中にはとても大きな石が置かれていて、部屋の温度も外より数度高い。

「犬坊主そろそろ限界と違うカ一万跳んで75」
「ガングロねーちゃんこそ、気が弱くなっとるで一万跳んで76」
「いやいや犬坊主こそ腕が笑ってるアルよ一万跳んで77」

彼女等は一歩も譲らず、ひたすら腕を動かしつづける。もう何時間そうしているのかわからないが、滴る汗が水溜りのようになっているところを見ると、1・2時間ではないだろう。

なぜそこまで頑張るのか。その理由は彼女等の眼前にあった。

『マッド博士の筋肉増強剤』

罰ゲーム付きなので頑張らざるをえなかったのだ。本来の使い方を完全に無視しているあたり、薬の効果に頼るわけではなさそうだ。
当たり前だ、彼女等は格闘家なのだから。

己が磨いたものだけで道を開く者達に、薬など邪道だ。

『負けるか〜〜〜〜!!』

現在3勝3敗でタイ記録らしい。

これまた邪魔するわけにもいかず、アキラはそっと階下へ降りていった。



そろそろ1階が近いのか、潮の香りが漂い始めてきた。
それと同時に

「死ネーーー!」
「テメェが死ねーーー!」

聞きなれた罵声と金属音が聞こえる。どうやらチャチャゼロとスラムィがいるようだ。

「スラムィ〜?」
「お、御主―――」

主に呼ばれたので条件反射で振り向いたスラムィの体を、チャチャゼロのナイフが真っ二つに切り裂いた。

「―――人、ようやく来たのかヨ」

だが一秒と経たず元に戻った。そして今までの喧嘩していた相手をガン無視してトテテ―――と主人も下に走る。

「遅ぇっつーの」
「ゴメン。あとで温泉行こ」

ウニウニと纏わりつくスラムィに謝って、アキラは部屋を出て下に降りていった。

「…………納得イカネェ………」

一人残されたチャチャゼロはこの世の新たな理不尽を知った。









「ありえないな」

レンジの開口一番は否定。そんな彼は現在不思議ヶ池に品目別のしきりを作っている最中である。

「でも、今日スラムィにタイムを計ってもらったら、以前よりずっと早くなってて」

アキラがレンジに相談していたのは今朝のことだ。能力を使わずに泳いでも早くなる。これでは一生懸命練習している人たちに申し訳ない。
だから彼女は理由を話して絶の練習を早めるように頼んだのだが、帰ってきた答えは冒頭の否定の言葉だった。

「今お前が使えるのは『纏』と『発』、中途半端だが『絶』だ。人魚になるのが発、解除に絶を使っているわけだから、原因は纏にあるとしか言えないんだが………」
「纏じゃ強くなったりできない」
「そうだ。それはどっちかといえば『練』になる。だから早く泳げるはずがないんだよ」

だが現に彼女は結果を出した。ならば原因は発にあると考えるしかない。

「多分……能力が完全に抑えられてない……と思う。水を操るのも能力の一つなんだろ?前に進むってイメージに沿って周りの水が動いてるんじゃないかな」
「じゃあ絶を使えても意味ないんですか?」

それでは困る。人魚になって泳ぐのは楽しいが、それとこれとは話が別なのだから。

「そうなるが……一つだけ解決する方法がある。『制約と誓約』だ」

アキラはエヴァが持っているHUNTER×HUNTERの漫画を思い出す。たしかクラピカというキャラの話しでそういう単語があったような。

「漫画を見たならおおまかに分かるだろ?能力を発動させたり付加する条件をつけるんだ。お前はもう1個つけてるだろ?」
「水に半分以上浸からないと発動しない?」
「いや、むしろ『浸かると勝手に発動する』だろ。その手前にもう一つつけるんだ。こうしないと『念』は使えないって。そうだな…………水着を着ると常に絶とかいいんじゃないか?」
「じゃあそれ――――」
「ダメよ、それじゃあ」

念が使えなくなればよいと考えていたアキラはレンジの提案をそのまま使おうとしたが、もう一人の念使いが待ったをかけた。
池の中から出てきたエナである。

「リゾートでサメに襲われたときのことを思い出して。友達が襲われてるのにもたもた脱いでたら手遅れになるわ。あんなこと早々起きないけど、万が一って言葉もあるし」

そう言われて2人は納得する。

「どうせ自分を絶にするだけなんだから、もうちょっと簡単でいいわ。その辺りは自分で考えてね。そのほうが効果も違うから」
「うん、わかった」





「なんでエナさんが池の中から?」

華麗にスルーされたがエナは池の中から湧いて出たのだ。海や温泉ならともかく不思議ヶ池から出てくるの少しおかしい。

「一日中浸かってたら自分がもう一人増えると思ったんだけど………ダメだったわ」
「やっぱ魚じゃないとダメなんだなぁ………」

魚ではないのだから至極当然。だがレンジはあることを思い出す。

アキラに不思議ヶ池で増やしたタコを渡すと言ったように、魚でなくても水棲生物なら効力の範囲内なのだ。例えば海老やクラゲもそうだ。

ならば、

「人魚になったアキラか……」
「スラムィを入れたら………」
『増えるかも?』

レンジとエナはほぼ同時に閃いた。

「というわけでちょ〜っと協力してね」
「…………まぁ別にいいんだけど」

命に別状は無いから。それに魚もいる。暇にはならないはずだ。

「ちぇ〜、温泉のはずだったのにヨ」

アキラと一緒にしぶしぶ不思議ヶ池に入るスラムィ。24時間後が楽しみである。






エナはふやけた体を元に戻すため美肌温泉に行き、レンジは豊作の樹から収穫するためにどこかへ行き、二人きりになったアキラとスラムィは池の中を遊覧する。
どこかの水族館のように、様々な種類の魚が混泳する景色は実に圧巻だった。熱帯魚でもいれば目の保養になったかもしれない。
これらが全部食用だと考えると物悲しくなるが。

「……………」

スラムィが連れてきた手乗り人魚の歌声を聞きながら、アキラはレンジとエナが言っていたことを反芻する。

何かを身につけると絶。簡単でいい。いざというときにすぐ使えるように。
ピックアップするならこの3つだろうか。

普段の生活と念を使う時を分けるためのなにかがあるか。プール、寮の大浴場、海。人の居る場所で。
思い浮かぶことが断片になっては消える。

「…………ぁ」

だがその甲斐あって、彼女は何かを思いついたようだ。それを試そうとして陸に上がろうとするが、池に居る理由を思い出して留まった。

早く終わらないかな―――――あの2人も酷なことを押し付けたものである。






24時間後、人魚になったアキラは増えなかったが、手乗り人魚がもう一匹増え、なぜかスラムィの体積2倍になって外見が成長した。

海では2匹になった手乗り人魚がデュエットで綺麗な歌を披露している。両方とも見た目は大河内アキラそっくりなのでゴ○ラのコスモ○を見ているようだ。

これら意外な結果を見て面白そうに驚くレンジ。

「やっぱりアメーバだから増えても一匹になれるのか」
「そういうこった。いいなぁこれ、体積増えると分裂できっからまた今度増やすカ」

最初は三頭身だったが、見た目10歳ぐらいになったスラムィもまた、大きく一つになったり小さく2つなったりしている。
これでチャチャゼロからキャラが被ると言われることは無いだろう。

大河内アキラも打開策を見つけたようで、外に出る準備をしている。

「…………。スラムィ」
「ぁん?」
「あいつはお前が護ってくれよ」
「わかってんヨ。言われるまでもねェ」

元々水が無ければ使えない能力だが、今回使う制約で更に使えなくなることだろう。
何が起きるかわからないこの世界で彼女を護れるのは、力をもっているスラムィしかいない。
当初はほんの少しだけアキラに念を教えたことを後悔したレンジだが、ここまで来てようやく事の重大性に気付いたのだ。

ガンドルフィーニが言うには、チンピラ魔法使いはどこにでもいるらしい。大停電の襲撃のようにこの学園にある金目のものを狙う輩は少なくないそうだ。

珍しい。アキラが狙われる理由はこの程度で充分だ。

「この歳でレーラァになるもんじゃねぇな」
「年寄り臭ぇこと言ってんナ」

何も起きませんように――――南無南無とレンジは心の中で手を合わせた。





翌朝、部活にて。




先日と同じように、アキラは一人で泳ぎに来た。プールサイドにもスラムィがストップウォッチを構えて待機。
彼女は跳び込み台に立つと、水泳キャップを被って勢いよくプールに跳びこんだ。同時にスラムィはタイムを計る。
状況はなにもかも昨日と同じ。200メートル泳いで終了。だが、

「2分14秒」

アキラは息を切らせながらも、スラムィの報告に満足した。昨日よりタイムは縮み、こんなにも疲れているというのに、それがとてつもなく心地よい。

「うまく行ったじゃねぇカ」
「うん」

そう言ってアキラは水泳キャップを取る。長い髪が解かれると同時にネレイスが問答無用で発動した。

『髪を下ろさないと念は使えない』

アキラはそう制約した。元々水泳ではキャップを被るし、普段はポニーテールにしているのだから不都合は無かった。
ただ風呂は解いたり結んだりしなければならないのがネックになるが。

「念使えなくなったらここまで遅くなんだな」
「それでも前に比べたら早くなった方だよ」

髪をポニーに戻して、彼女はプールから上がった。制約がちゃんと発動するとわかれば、今日の収穫は充分だろう。


さぁ、これから学校だ。小人はどの仕事を終らせただろうか。
大河内アキラは今日もささやかな幸せを享受する。








ここまで来てアキラの口調がよくわからない自分に気付く。