捕らわれの姫ならぬ捕らわれの王子―――――――のはずなのだが、
「あれ〜、その魚は3枚じゃねぇの?」
(煮ると味が全体に染み渡るので、厚めに切って濃い味と薄い味を分けるんです)
「この太刀魚は?」
(骨を抜いてお味噌汁にいれると良い出汁がでますよ。身はそのまま食べていいです)
何故かさっちゃんと料理していた。
というのも、無理矢理連れて来られただけのことで、契約にはちゃんと指定の場所で寝泊りすると記されていたので問題はないのだ。(買収などを防ぐため)
余計な詮索ダメヨ―――という忠告を受けた後は自由の身ということらしいので、暇な時間をせいぜい有効活用しようとした結果が、さっちゃんと料理というものだった。
多少は気になる超一味の動向だが、得体の知れない技を使う超とネフェルピトーかモントゥトゥユピーあたりが転生したのかと見紛う化け物が相手では返り討ち必須なので、犬が腹を見せるように服従するしかなかったのだ。人生守りに入ると人は途端に弱くなる。
元々レンジは弱いが。
そういう一身上の都合により、大人しく料理をしている。
余計な詮索ダメヨなので、さっちゃんがここにいる理由も聞かない。律儀な男である。
「(くそう、俺はいつか最強系主人公のごとくむやみやたらと女が寄って来てナデポ→18禁展開でそれなんてエロゲって言うんだ!)」
そんなことをした日にはエナに踏み潰されると分かっていても、こんな主人公とヒロインの立場が逆の展開に身を置かれる方にしてみれば、それぐらいの特典を望んでもバチはあたるまい。
今のところ望みはティッシュペーパーを2枚に分けたものより薄い。
一方その頃
もう格闘大会どころじゃなくなった。
一端神社から避難したネギはいつものメンバーに加え、楓とタカミチを連れて別荘へ引き上げた。
アーネという人物の会話で粗方の情報を入手したタカミチは、魔法使いを総動員して超鈴音とその一味を捕縛するか否かを皆に問う。
すぐに学園長やその他の魔法使いに知らせなかったのは、長年の経験のおかげである。不整理の情報は混乱を招くうえ、自分の意図しないところで事態が悪化しかねないからだ。
「すぐに応援を呼びましょう!超さんが悪いことをしようとしてるなら止めないと!嵩田さんだって」
すぐに食いついたのはネギだった。
悪いこと、正義に反する。この概念に敏感だからだろうか、もう忠告のことなど頭から抜けている。
そこに楓が待ったをかけた。
「情報があまりにも少なすぎでござる。相手の実力、数、それらがどこまで分布しているのか。なにより解せぬのが動機………いや、『目的』。超とアーネが組んでいると、疑い様はござらぬが、この大会で何を得ようというのか」
こういう非常事態になれているのだろうか、冷静に現状を分析して披露した。
「ただ、アーネは事を荒立てなくなければと言った。少なくともこの大会で何かを起こすつもりはないように思うでござる。警備員殿は審判をする以上、命の問題はないでござろう。洗脳ぐらいは………視野にいれてもよいと思うが………」
ビキ!!―――――言い辛いと知ってても、言わなければならないので遠慮がちに言った途端、潰れるような、折れるような音がエナの手から鳴る。
輪になって話し合っているネギ達から少し離れた所にいるエナの顔は窺い知れない。
彼女は龍宮神社から、ずっと気落ちしていた。
気を使って誰も話し掛けないが、おそらくそれは正解だっかもしれない。
おかげで、彼女が呟いた内容を聞かなかったのだから。
ネギま×HUNTER!第35話「………………殺してやる」
空回りしているとはつゆ知らず、ネギ達は今後の方針を大まかにまとめた。
当然ながら一般人に魔法を知られないよう手加減する。
この事件を他の魔法先生及び生徒には極力知らせない。ただし演説の呪文詠唱云々でマークはされているので注意すること。
嵩田レンジを助けるため、目標はアーネを倒すことだが、命の危険を感じたら即棄権すること。
仲間同士の試合は適当に切り上げて体力を温存すること。
「アーネが何者にしろ、試合の完遂が目的なら死人を出さないはずだ。重症は覚悟しなければならないけどね」
「そんときはうちの出番や♪」
木乃香の能力には『3分以内に負った傷は治る』というものがある。
共に敵地へ向うことを渋った刹那だが、木乃香の説得で了承。
「本戦が始まるまであと8時間。皆には悪いけど、対超一味に備えて修行してもらう」
夜には打ち上げがあったはず。中学最後の祭りが潰れていいわけがない。思い出になるはずなのだから。
なのに誰一人嫌な顔をせず、頷いた。
レンジを助けるため、大切な人を守るため、信念を貫くために。
「では、ネギ坊主には瞬動を教えておくでござる。格闘主体なら、これを使えねば話にならぬでござるよ」
「はい、よろしくお願いします!」
ネギはLvがうpした。
ネギは瞬動を会得した。
「刹那、話がある。ちょっと来い」
「え?あの……エヴァンジェリンさん?」
「いいから、私の目を見ろ」
刹那、何かに吹っ切れる。
「犬坊主、付き合うアル」
「正確には坊主やないけどな」
古菲と小太郎はLvがうpした。
古菲と小太郎はかしこさ以外が全体的に上がった。
「それじゃあアスナ君は僕とするかい?」
「是非お願いしまっす!!」
アスナはLvがうpした。
アスナは何故か咸卦法を修得した。
高畑や楓の指南のおかげで、まるでチートのごとくレベルアップしていくネギ軍団。
超ドSのエヴァを加えて丸々八日間も修行すればある意味当然かもしれない。
そうやって各々が頑張って修行しているとき、エナは一人別の場所にいた。素早く動いたり身体を向上する技はすでに会得しているからだ。
念は瞬動のように素早く動くこともできるし、咸卦法のようにオールステータスUPもできる。
魔法や気とルーツが一緒でも微妙に違うので、本家には敵わない中途半端なものだが。
ならばどうやってエナは強くなることができるのか。
答えは単純。制約と誓約を更改するか更新する。
エナの制約その1。能力用。
他人に制約を課し、それに伴う負担をエナが肩代わりしなければならない。複数人可能。
条件
1・制約は一人一つ。
2・相手に制約を知られてはいけない。
3・制約は勝手に課すことができる。
4・エナの敵性ではない者及び、エナの基準で決めた者に限る。
5・以上は念能力者(発が使える)が対象でなければならない。
6・制約で増える容量は決められており、制約一つに付き念弾を1〜3個程度まで増やせる。威力の高いもの、超常じみたものは1つ、または制約2つで一つしかできない。その基準は本人もおおまかしかわからない。
7・念弾にもなんらかの制約か誓約を付けなければならない。
8・制約を課された側は従う必要が無く、いつでも破ることが出来る。
9・制約を破りそうになっても実力で阻止することができない。
10・破られた場合、その制約で作った能力は消え、制約は2度と課せない。ただし別の念使いに制約したとき、同じ弾を作ることが出来る。
【実例】
嵩田レンジは真剣な内容に限りエナに絶対服従。エナは真剣な内容に限り、嵩田レンジに絶対服従しなければならない。
ここにはいないが、HUNTER世界に残してきた二人にも類似した制約をかけてある。現在も継続中。
他人と能力や制約を共有するのはゲンスルー一味で証明されている。
ただし、恐ろしく不安定かつ不確定なものであるのは否めない。
なにせ自分の手が届かない場所で事件が起き、そのせいで制約を破られようとしても阻止できないのだから。
ゆえにエナは吟味するのだ。相手の思考や行動パターン、クセから身体の特徴まであらゆる情報を収集し、どんな制約にするのかを。
今回ターゲットにされたのは、ここにいない大河内アキラである。
彼女なら充分行動パターンが予測できる上、元々争いを好まないので制約を比較的軽いもので済む。
今回エナがアキラにかけた制約は『大河内アキラは戦わない』という、以前言っていたことをそのまま転換したものだった。
ただ戦わないだけなら制約にならないが、ここに『念を使って戦わせない。代わりに自分が戦う』を加えることで、ようやく誓約が成り立つ。
一見悪くないと思うかもしれない。だがあらゆる状況を考えてみれば、あの大河内アキラが他人の危機を黙って見ているような女ではないと知っているはず。
万が一敵が彼女の友人知人を襲ったとき、守るために戦うのは目に見えている。
ましてや何かが起こる確率の高いこの事件、戦わないという条件は『リスクが大きすぎる』。
だが、それが狙いなのだから問題は無い。
念は覚悟やリスクを負うことで、より強力になる。力を求めているエナにはうってつけというわけだ。
こうして誓約と制約は決まった。
次は弾の色の選定だが、予めコンセプトを決めていたのでこれは割愛。
最後に決めるのは弾の能力だ。
現在確認できるエナの能力は10個ある。
これらとまったく重複せず、かつ爆破に関する物か爆発して効果を得られる物を吟味。
それが決まれば、対象を細部に渡って研究し、イメージを刷り込む。
具現化能力は本来は何ヶ月も掛けて形を作る。しかしエナの場合、制約の厳しさと人形作りのノーハウ故か8日間をフルに使って作成に漕ぎ着けることが出来た。
今、エナの両手には拳大の弾が浮かんでいる。感触は陶器のようで弾くとチンチンといい音がする。
彼女はそれを壁や地面に向けて叩きつけたりするが、傷一つ付かない。むしろ壁や地面が壊れていく。
やがて興味が無くなったのか、エナは弾を誰も居ないところへ投げ捨てた。
その10分後、弾はズドン!!という大きな音と小さなクレーターを作って綺麗さっぱり消えた。
さらにもう一方では黄色い粘着質な物体が撒き散らされている。
同じ色だったはずなのに、効果が違う。それが彼女の狙い。
それは白弾―――時限爆弾―――だった。
現在使える色で黒以外をランダムに発生させる弾。
それだけではなく、弾丸としても使えるのが最大の特徴である。
今までの弾は当たれば爆発するという、爆弾本来の役目を果たしている代わりに、1度色の効果を知られれば対処されるのが容易くなる欠点があった。
しかし白弾は周で念を込めれば本物の大砲と変わりない威力を出せる上、爆発するまで余裕があるので、複数撃てば見合った効果が期待できる。
この弾に課した制約は『色はランダム』『精製に必ず1分以上掛けないと不発し消える』の二つ。
他の能力者がどうやって発に特殊能力を付加しているのか、エナは知らない。もう少し要領よく考えれば簡単で強力な能力を得られただろう。
ただ自分にとって、これがもっともしっくり来るやり方だっからそうしただけ。
彼女もまた、不器用だということだ。
力を得たエナだが、弾を一つ増やしただけでは満足しなかった。
別荘で過ごして八日目、皆が最後の仕上げをしているとき、彼女はレンタル秘密ビデオ店で、アーネのことを調べようとしていた。
ついでに超鈴音も調べれば、彼女達が何をしようとしているかわかるだろう。
己を知り、相手を知れば百戦危うからず。昔の人はいいことを言った。
店員のいない店に入り、ズラっと並ぶビデオ群から一番最初の棚、ア行に向う。
棚にはテレビで知った、本の著作者欄で知った等、ある程度因果がある人物か、本人が知っている名前しか載らない。
居もしない人間の秘密など情報として扱えないからだ。
アーネ、アーネ。思い出すのも忌々しい名前を呟きながらエナはビデオのケースを指でなぞりながらアーネという名前を探していく。途中アベンガネや綾瀬夕映の名前が目に映るが、それはまた今度ということに。
しかし、エナはとうとうアーネのビデオを見つけることができなかった。それどころか超やハカセ、朝倉のビデオも無い。
誰かが借りていったのか――――とも一瞬考えた。それならケースが残り、レンタル中と札が貼られる。その証拠に超とハカセ、朝倉のビデオケースにはレンタル中の札が貼られ、証明している。
会員が少ないのだから、そんなものがあれば一目でわかる。
ところがアーネのビデオはそのものがなかった。つまり、最初からアーネ・トムという人物がいないということになる。
ゾクっと、エナの背に悪寒が走った。どうも相手は一筋縄ではいかないらしい。
嫌な予感がする――――そこまで考えて、エナは急いで塔の中に向った。
あまり使わない、もしくはいざという時誰かが使えるように、隠しておいた残りのカード。
それすら綺麗さっぱり消えていた。
エナの予感が更に現実めいたものになってくる。
別荘を知っている人間なら超鈴音もハカセも該当するので、レンタルビデオだけが消えていても不思議じゃない。
だがカードは、レンジとエナしか知らないものだ。茶々丸はおろかエヴァすら知らないはずなのだ。
どこかで情報が漏れている。そう考えるより手っ取り早く納得できる推理が、エナの頭の中を駆け巡っていた。
「レンジが………超側?」
自発的に裏切ったか、それとも楓の言うように洗脳されているのか。
どちらにしろエナにとって非常にまずいことは、カードを逆に利用されたら勝ち目がないということに他ならない。
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No.073 闇のヒスイ
入手難度 : A カード化限度枚数 : 15
悪魔の加護を受けた宝石。
持ち主に危機がふりかかりそうになると、他人にその厄災を渡してしまう。
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No.082 天罰のつえ
入手難度 : A カード化限度枚数 : 15
罰を与えたい人の名前を唱えながらこのつえを天にかざすと、
貴方か相手か今までより多くの悪業をなした方に強い災いが降りかかる。
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前者はネギ軍団が危機そのものなので該当する。
後者は悪業の塊であるエナが該当する。ついでにエヴァも。
なんということだ。これではせっかくの能力も意味が無い。
HUNTER×HUNTERのハンゾーのようにorzなるしかないエナだが、もう一つ問題がある。
これらのことをネギ達に知らせるべきか。
「……………。やめとこ」
カードのことを言わなければならないし、なにより知った途端皆でチキチキorz大会必須になりそうでイヤだ。
知らぬが仏という言葉もある。今回も心の内に秘めておこう。
これでエナの仕事は決まった。カードの拡散を防ぐため、徹底的に相手を叩く伏せ、取り返す。
口実はできている。ただ力だけが足りない。あの化け物を相手にするには……まだ。
仕方がない―――――エナは塔の中に入り下へ下りる階段に向った。
その階段を二つ三つ下りたところで、カパっと地下室への蓋を開けた。この部屋は持ち主のエヴァすら知らない。
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No.057 隠れ家不動産
入手難度 : A カード化限度枚数 : 11
好きな場所にあなただけの秘密の部屋を作ってくれる。
入所条件は誰もその部屋に入れないこと、部屋のことをしゃべらないこと。
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部屋はエヴァのログハウスの居間のように多量の人形で埋め尽くされていた。その中から目的の人形を探し出し、中身の綿から一枚のカードを取り出した。
「持っててよかったと……思うべきか………」
たった一枚のカード。それを使う日が来るなど、彼女は思わなかっただろう。
使えば限りなく不愉快な思いを抱くことは明白だから。
家族がマフィアで、全てを失って。
「平和なんて惜しくないけど」
化け物と戦った後は、また化け物退治。今度は人間という最強のモンスターまでいる。
「少しぐらい」
彼女はもう一度血を被る。
「休ませてよ」
自分の血か相手の血かわからなくなるまで、真っ赤に。
短いね。
オリジナル要素を入れた途端話が書き辛くなってもうた!
でももう結果というか、終わり方が決まったので進むのみ!
終着はまだまだかなり先ですがね。