賞金一千万という巨額と、格闘という血が湧き踊るイベントが口コミで広がり、観戦者の数は予選より大幅に増えた。
気の使い手が出る大会。予選通過者の半分が子供。前年度ウルティマホラ優勝の古菲。話題性には事欠かない。

だが、この大会がただの格闘大会ではないと、彼等は知る由も無い。

今、八日間の修行を終えた戦士達が舞台へ上がる。
何が悲しくて祭りの真っ最中にこんなことを――――そう考える人はもうここにいない。
超鈴音の悪巧みを阻止するため、文字通り身を削って力を得た者達は

「行きましょう!」

激越のような返事をもって応えた。






ネギま×HUNTER!第36話「まほら武道会開戦!第一回戦と第二回戦と第三回戦の悲劇」






選手控え室にはすでにネギ達以外の選手が揃っていた。
巨漢の田中、ロングコートを着たクラスメートの龍宮真名、試合前だというにの激しく型を繰り返す中村達也、素性のわからないフード姿の3人。

そして、忘れもしないオーラを放つアーネ・トム。ネギ達の―――取り分けエナの撃刺せんとする視線もどこ吹く風で、静かに佇んでいる。

「おはようございます!。皆さんようこそお集まりいただきまし……た」

全員が揃うのを待っていたのか、早速舞台の袖から朝倉と超が登場する。
わいわいと団欒する場景を望んでいたわけではないだろうが、あまりにも剣呑な雰囲気に最初のテンションを維持できずにしり込みした。

超に雇われているからテメェも敵だろゴルァ!と言わんばかりのエナの視線があれば仕方が無い。視線で人が死ねるなら間違いなく彼女は死んでいる。
朝倉は隣にいる超に促され、しどろもどろになりながら、試合の説明を開始する。

「昨日より随分腕をあげたようだな。どんな魔法を使った?」

説明を聞きながら、アーネは視線を合わせずネギ達に問う。

「死ね」

真っ先に答えたエナだが、正しく問答無用の返しだった。

「人が親切に忠告してやったのに、随分な言い様だ」
「あれは脅迫というんだよ。忠告ならもう少しためになることを言ってもらいたいね」

タカミチに向って、もっともだ――――と、アーネは喉を鳴らして笑う。

「ならば為になることを一つ」

次の言葉でアスナやエナといった、血の気が多い者の頭に血が上る。

「どう足掻いても私には勝てん。無駄な努力は御苦労と言ってやろう」

剣呑な空気が一触即発まで昇華する。魔力、気、念の三種が吹き荒れ、朝倉はまともに説明ができなくなる。

「滾るのは結構だガ、それは試合まで取っておいてもらいたいヨ」

見かねた超が手を叩いて注目を集めた。おかげで空気も多少収まる。人をおちょくるような笑みだが、その下にはどんな本性があるのか。

「試合の説明は以上ネ。何か質問はあるかナ?」
「はい!呪文とかよくわからないんですが、技名は叫んでいいんですか!?」
「技名はOKね」

真っ先に手を上げた中村達也はガッツポーズをする。
他には―――朝倉が言い終わる前に、アーネとエナが挙手した。
あまり聞きたくないなと思いつつ、朝倉はエナを指名する。

「試合中なら殺しても事故扱いよね?」

遠回しもへったくれも無い殺人宣言に周りはおろか、ネギ達もドン引きした。

「ふ、ふ…不慮の事故で再起不能になることは考えられますが、なるべく互いを尊重して戦ってください」

まだ試合が始まっていないのに、朝倉はこの仕事を引き受けたことを後悔した。

「えぇっと…アーネさんは?」
「いや、もう充分だ」

そう言って腕を組む。

「私も同じことを聞きたかったからな」
「言うじゃない」

目線を合わせていないのに、エナとアーネの間が歪むような錯覚をほぼ全員が感じた。
エナは笑っている。アーネの顔は見えないが、おそらく笑っているだろう。
何を思っているのか容易く想像できるのが恐ろしい。









神社の内池に作られた能舞台。その周りに大勢控えている観客たち。
ちらほら見える3−A生徒。

『皆様、大変長らくお待たせしました!!』

何も知らない人達は今か今かと待ちわびている。
ただのイカサマ大会なのか、それとも本物の超能力なのか。
格闘そのものは普通のエンターテイメントとして成り立っている。観客はなんの疑いを見せず、試合を楽しむだろう。

その裏で本物の戦いが行われようとしているなど、知りもせず。

『只今よりまほら武道会、第一回戦に入らせていただきます!!』

試合場を喚声が包んだ。ついに始まってしまったのだ。
もう誰にも止められない。

『初戦からいきなり目玉!ネギ・スプリングフィールド対高畑・T・タカミチ!』

年齢やら身長やらが倍近く離れている組み合わせにもう一度喚声が轟く。
ネギには子供先生という立場から黄色い声援が多い。逆にタカミチは色々恨みを買っているようで、野太い野次をそこかしこから投げつけられていた。

野次が聞こえた直後にハリセンの音が響くのはご愛嬌。

「ネギ君、瞬動は修得したかい?」
「うん」
「それじゃあ、この試合で君の実力を見せてくれ。彼女達と戦えるだけの力があるか」
「うん。本気で行くよ、タカミチ」

試合のルールに乗っ取って―――とまで言わない。
そこから会話は無い。舞台に上がって配置に付くまで、2人は黙って気を高ぶらせていく。

『主審は私、朝倉が。副審はデコピンマンこと麻帆良警備員の嵩田レンジが勤めさせていただきます!』
「なんでフルネームで紹介すんねん」

デコピンマンという不名誉な2つ名で紹介されたレンジは、いつもの警備服を着て試合場に上がった。

「無事でよかったよ」
「どうも。時間が出来たら話を」

タカミチの近くを通る瞬間、短く応答を済ませて外枠の隅に移る。
対峙する2人、それを見守る観衆。
これでようやく、お膳立ては終った。

『それでは皆様お待たせしました!第一回戦――――』

もったいぶるようにゆっくり腕を上げていく。その瞬間だけ歓声が止み、朝倉の一挙一動が注目されている。

シン――――――とする会場で、

『――――――Fight!!』




「吸血破壊光線!!!」
「ぐわああぁぁぁ!!!」





試合は終った。








「超さーーん!!」

某コンピュータールームでハカセが超鈴音に駆け寄る。
見事な足ズッコケをかましている超の前には大きな画面があり、たった今タカミチを倒したネギの映像が流れていた。

「あはは〜、ネギ坊主とタカミチ先生の分析をしようと何十台もカメラを用意したというのに、一瞬で無駄になてしまたヨ〜。組み合わせ間違えたネ〜」

虚ろな目でアハハと繰り返し笑う超。学園一の天才でも予測できないことはあるだろう。だがいくらなんでもこれはあんまりだと、超に対して激しく同情した。

「き、気を取り直して行きましょう!まだ試合はたくさん残ってますし、必ず成功しますよ!」
「なんか嫌な予感しかしないのはどしてだろネ」
「そんな非科学的なこと言わないで下さい!」

初っ端から計画が倒れてしまい、ネガティブ思考に陥った超をなんとか立ち直らせるのに必死のハカセ。そんな彼女達の前にある大きなディスプレイには、担架で運ばれていく黒焦げのタカミチがネギに希望を託している最中だった。

『ネ…ネギ君。後は任せガク……』
『タカミチーーーー!』

よく考えれば最大戦力がリタイアしたと気づくのに時間は掛からなかった。







「このアホ、アホ、アホ、アホネギー!!!!」

アホと言う回数だけネギの両頬からハリセン音が轟く。

「あぅ〜〜」
「あぅ〜じゃないでしょ!この事態をどうしてくれんの!」
「だ、だって本気を出して実力見せろって言われたから僕……」
「最初に瞬動がどうのって言ってたんだからそっちの実力を見せなさい!」

刹那がまぁまぁと宥めるも、気持ちは一緒だった。
まさかこんな初っ端からタカミチが使えなくなるとは。こうなってしまっては、自分か楓がなんとかするしかない。
本当なら万能の能力を持つエナに探りを入れてもらいたいところだが、生憎彼女はアーネを始末することで頭が一杯の様子。期待はできそうにない。

「せっちゃ〜ん、アスナ〜」

選手が控えるエリアの外から、魔法使いのような帽子を被った木乃香が呼ぶ。

「センセー、もう治療室に入れられたから会えへんかった〜」
「そうですか」

木乃香のアーティファクトでタカミチが治せれば御の字だったのだが、超側もこのチャンスを逃すほど間抜けではなかった。
すでに3分が過ぎてしまっているため、タカミチのことは諦めるしかない。

「過ぎてしまったことは仕方ありません。今後は再起不能にならない程度のナアナアで行きましょう」

全員――特にネギに向って今後の方針を伝える。コレで少なくとも自爆は免れるはず。
それでも刹那は嫌な予感で心が一杯だった。

「(仕方が無い、あの人を…)」

オン―――陰行を施した小さな分身が静かに神社から遠ざかっていく。







「ネネネネネネギ先生がかかかか怪光線ををををををを」
「パル、これはトリックです!やらせです!そうとしか考えられないです!」

観客席の一角にネギの応援をしにきた図書館三人組がいた。どんな戦いをするのかなという期待を怪光線という洗礼で壊されたパルは、その想像力豊かな腐脳でも処理しきれずパニックに陥った。

吸血破壊光線のことを知っている夕映とのどかには見慣れた光景だが、これが一般人の普通のリアクションと言える。

「そ、そうだよね。いくら子供で先生だからって怪光線までは出せないよね〜」

ならばナニなら出していいのか聞きたいところである。

「てことは他の試合も全部やらせになるのかな〜。それはそれで面白そうだけど」

なんとかパルを騙せて内心ガッツポーズの夕映。これなら何かが起きても大抵のことはトリックで済ませられるだろう。
次なる問題はネギの方。いきなりタカミチを使い物にならなくしたら後々困るのでは?と、行く末の不安を感じざるを得なかった。

なんとか力になりたいと思うが、いつぞやの別荘でエナに言われたことが心にこびり付いて、思い切ったことができない。ここでスタンドプレーをする愚かさがわからないわけじゃない。
それでも……力になりたいと思うのが女の性ではないだろうか。

だから、今は応援を。これ以上戦える人が減らないように。








「ネギのノータリンめ」

引率を亡くしてしまった生徒がどうなるのか、考えるだけ恐ろしい。
どこで超が目を光らせているかわからない以上、迂闊に彼等と接触することも出来ない。
レンジはこの上なく不安だった。

「試合だけなら……まともに終ってくれると思う………多分」

超の狙いがなんにしろ、アーネの言うことが確かなら試合中は表立った行動は取らないだろう。
ならば水面下で何かをするはずだ。それとも時間稼ぎか。

どう動こうにも、今は人手が足りない。
服以外の荷物は全て没収されたので影武者切符も使えない。

「待つしかないか………」

チャンスが来るまで。悠長なことだと分かっていても、どうにも出来ないのは実にもどかしいものだ。

『先ほどの試合ですが、ルール上はなんの問題もないので有効とさせていただきます』

試合終了直後に『ビームは飛び道具』という抗議が殺到しての返答は、実に納得のいかないものだった。しかし主催者側から言われたら誰も文句は言えない。そもそも誰が格闘大会でビームを使うと思うだろうか。
田中の最終テストという超側の都合が絡んでいるが、そんなことを知らない人はこう思う。

どこが格闘やねん――――。

『続いて第二回戦に移らせていただきます!両選手、入場してください!』

最初に入場したのはゴスロリっぽいメイド服もどきを着たアスナ。手にはしっかりハリセンソードを握っている。はっきり言ってそぐわない。

何故アスナがゴスロリ衣装を着ているのか。その原因はエヴァの

「貴様等の戦闘服はゴスロリ衣装とする!!」
「やめてーーー!!」

という鶴の一声で決まってしまったのだ。合掌。

その相手を務めるのは全身を黒布で隠した、まんま魔法使いにしか見えないどこかの誰かさん(あえてここで名前は言わない)。

『二戦目を飾るのは、聖ウルスラ女子高等学校2年、高音・D・グッドマン選手!麻帆良中等学校3年神楽坂アスナ選手!』

紹介と同時に顔を隠しているフードを取る。
意外に美人だったため、周りから野太い歓声が上がった。

「あの人は確か……」

見覚えのある顔を見て控えにいる刹那が驚く。
その声に反応したもう一人の覆面が外郭を取った。

「あの……おはようございます、ネギ先生」

現れたのは先日ガンドルフィーニと共にネギ達を襲った女の子。なのだが……。

「えぇっと、どちら様でしょう?」
「え、えぇ!?あ、そうか………あのとき屋台にいたから会ってないんだ…」

詳しくは30話参照。

「じゃあ、あの犬耳の子は!?」
「なるべく人前に出たくないって、奥にいます」

主に同居人へ見られたくないとのこと。どうせ次の試合でさらすことになるというのに、無駄な足掻きをする。
ジィっと、怪しげなものを見る視線が女の子を貫く。

「何故私がここにいるか、さぞ驚かれたことでしょう、ネギ先生。それはアナタをこらしめるためです!」

予想外の展開にワタワタと慌てる女の子を置いて、台上にいる高音がビシッ!とネギを指差した。

「私は目撃したのです。ネギ先生……あなたが『すみません、進行に支障が出るので話は試合後にしてもらってよろしいでしょうか?』あ、すいません」

朝倉に釘を刺されてしぶしぶ位置につく。

「ぼ、僕が何かしたんですか?」

身に覚えが無いことでこらしめられてはたまらない。ネギはまだワタワタしている少女に聞いた。

「ネギ先生が世界樹の魔力から解放されたあと、私とお姉さまはこの辺りをパトロールしてたんです。『反省すると言ったあとでこんなくだらないイベントに出るなんてけしからん!』って、急遽出場することになったんです」
「えぇ?!」
「お姉さまは1度決めると一直線の真直ぐな人なので、下手な言い訳はしない方がいいですよ」

普段はとてもいい人なんですけど―――という補足はありがたくもなかった。

どんなにカシオペヤで遡ろうとも、時間連続帯は一定の流れを保っている。
ディ○ニー国のネズミのように複数の場所で目撃情報があったネギでも、高音から見たら一人のネギなのだ。
別の場所でパトロールをしようが、別の場所でアスナに金的を喰らっていようが関係ない。

「アスナさん気をつけて!その人凄く強――――」





『第ニ回戦――――Fight!!』





「遅れをとったとはいえ、操られていたネギ先生を倒した実力は見事でしたわ、神楽坂さん!敬意を表して私の奥義を持って戦わせて頂きます!」

宣言と同時に高音は黒い外郭を脱ぎ捨てた。

「これが操影術近接戦闘最強奥義『黒衣の夜想曲―――ノクトゥルナ・ニグレーディニス』」

ゴスロリのような黒衣の高音と同じく黒衣を纏った大型人形が、さながら守護霊のように彼女の背後に現れた。

『うおーー何か凄いのが出たーーー!』

高音本人より一回り大きい人形の威圧感からか、観客席からも喚声があがる。

「この術は全ての打撃を無効にする能力があります!ハリセン以外の攻撃方法が無いアナタでは勝ち目は皆無!」

そう言って右手を勢いよく前に突き出した。倣うように人形の背中から飛び出した無数の影がアスナを襲う。

「――――――――16本」

未だ微動だにしないアスナは、襲ってくる影の数を呟く。
それがどれだけ凄いことだとわかったのは、傍から聞いていたレンジだけだった。

彼女は未知の技を目の前にしながら、平常心を保ち、相手の攻撃を冷静に分析した。
レンジは思う。自分だったらあんなの出された瞬間――――むしろ敵と相対した途端クロノスライサーで瞬殺していただろう。態々高音の口上を聞いて先手を取らせる必要なんかない。

アスナがそれをしたのはおそらく、

「左手に魔力――――――」

自分の実力を確かめるため。

「右手に気」

気とも魔力とも取れる波動を迸らせ、襲い掛かってくる影をハリセンで一蹴。
驚く高音に時間を与えず、一瞬で距離を縮め懐に入る。

瞬動のように見えて、実はタダの気を込めただけのダッシュ。そのわずかな時間の違いが影人形の自動防御を許してしまった。
それでもアスナはハリセンを一閃する。

なんと、全ての打撃を無効にするはずの影が紙切れのように消えたではないか。
戸惑いの無い一撃がアスナのイメージする結果をはじき出したのだ。

これには高音も驚いた。アーティファクトしか持っていないと思っていた少女の実力が見当違いを越して、底の見えない実力とは。
驚き、萎縮してしまった高音。その隙を逃すようなアスナではない。

「たーりゃーーーーー!!!!」

咸卦を乗せた一撃が高音の頂点を撲った。ハリセン独特のいい音だが、衝撃はそれ以上ある。
まるで鈍器。そんなものを食らって平気でいられるほど、高音は人間やめていない。

「キュウ……」

脳を揺さぶられた所為で目を回し、術者が気絶した影響で影人形も消え、可愛い悲鳴をあげて高音は仰向けに倒れた。

『高音選手ダウーーン!!カウントに入ります!!』

高音が最強ならアスナは窮極(アルティメット)。
今回はより高みに居る方が勝ったようだ。

普通ならこのままカウントをとって終了。そのはずだったのだが―――

『3………4………おぉ!?高音選手の服が消えていってる!?』

そう、服も魔法で作っていたため、影人形と同じ理由で消えようとしていた。
今度はアスナが驚く番。彼女とてここまで意図した覚えは無い。

高音の肌が徐々に顕になっていくと同時に客席から興奮したどよめきが強くなっていく。
これはやばいと感じたアスナは自らの服を掛け布代わりにしようとした。自分の下着を見られることになるが、この際仕方が無い。

覚悟を決め、思い切って服を脱ごうとした――――その瞬間

すでに誰かが白い布を掛け終えていた。

「嵩田さん!?」

一瞬で布を掛けたのはレンジだった。能力の事を知っているアスナは、レンジが舞台に上がって布を掛ける所に気づかなかったことに納得はいく。
だが余りにも都合が良すぎる。何故そんな布を持っていたのか。

アスナが理由を聞いてみると、とても納得がいく答えが帰ってきた。

「ネギがいる時点で誰かが脱がされるって思ってたんだよ」
「わかります!!」

しみじみ語るレンジに目を潤しながら同意するアスナ。
ネギのクシャミで脱がされた者同士、共感できる部分があったようだ。

『9………10!10カウントダウンにより神楽坂アスナ選手の勝利です!!』

ここでカウント終了。朝倉がアスナの手を取って高々と挙げ、勝利を誇示した。
客席からアスナの勝利を称える『ワーーー!!』とレンジのいらんことを訴える『ワ〜〜〜』が聞こえる。

「神楽坂、エナにあんまり無茶すんなって伝えてくれ」
「はい、伝えておきます」

担架で運ばれていく高音を見送り、自身も控え席へ向う。

「あぁそうだ、もう一つ」

その途中、レンジに呼び止められた。

「お前等も無茶すんなよ」

一瞬キョトンとして、アスナは朗らかに笑う。

「はい!」









「超さーーーん!!」

今度はデスクに突っ伏している超鈴音に駆け寄るハカセ。

「またも一瞬で終てしまタ」

文章ではチマチマと書いたが、彼女達の試合を簡単に描写すると、

戦い始まる→高音口上→高音服脱いで戦闘態勢→高音の攻撃→アスナ攻撃避けて急接近→ハリセン2撃→終了。

カウントを除けば10秒にも満たない見事な秒殺。アクションも少なく、収集できた情報といえばアスナが咸卦法を使えることと、高音の操影術ぐらい。

ネットで流す材料に使うには、あまりにも短すぎた。

「一応ネットにうPしておきますか?」
「CGとかツマンネとか書かれるのが関の山ね。やめとくよろし」

むしろメイド強ェェェェ!とかメイド燃え!程度しか書かれないかもしれない。
そんな状況で魔法が云々とか書いても効果は期待できないだろう。
また鬱オーラがフツフツと漏れ始めてきた。

「まだ13回戦も残ってますから、きっと良い絵が取れますよ!大丈夫、自分を信じてください!ほら、三戦目が始まってますよ!」
「む、もう始またか。どれどれ」

ディスプレイでは、さっさと始まった第三回戦で、ゴスロリ衣装を着た犬耳の少女が佐倉愛を一瞬で空にぶっ飛ばした映像が流れていた。

「プギャーーーーー!!!!」
「超さーーーん!!」

哀れ。